第2 障がいのある人の現状等 1 障がいのある人の現状  北海道の人口に占める障がいのある人の割合は、高齢化等の影響により、年々増加しています。 また、全国と比較すると、すべての障がい種別で障がいのある人の割合が高くなっています。 (1)身体障がい 身体障害者手帳交付者数は、平成30年度(2018年度)末現在で、298,536人となっており、平成20年度(2008年度)末と比較すると、10年間で4,226人増加しています。また、北海道の人口に占める割合は、平成20年度(2008年度)末の5.3%から、平成30年度(2018年度)末で5.6%と0.3ポイント増加しています。全国においては、5,087,257人で、人口比4.0%となっています。 (2)知的障がい 療育手帳交付者数は、平成30年度(2018年度)末現在で、63,048人となっており、平成20年度(2008年度)末と比較すると、10年間で20,035人増加しています。 また、北海道の人口に占める割合は、平成20年度(2008年度)末の0.8%から、平成30年度(2018年度)末で1.2%と0.4ポイント増加しています。 全国においては、1,115,962人で、人口比0.9%となっています。 (3)精神障がい 精神保健福祉手帳交付者や自立支援医療受給者など保健所で把握している精神障がいのある人の数は、平成30年度(2018年度)末現在で、167,208人となっており、平成20年(2008年)12月末と比較すると、10年間で36,827人増加しています。北海道の人口に占める割合は平成20年度(2008年度)末の2.4%から、平成30年度(2018年度)末で3.2%と0.8ポイント増加しています。 なお、精神保健福祉手帳交付者数は、平成30年度(2018年度)末現在で、48,780人となっており、平成20年度(2008年度)末と比較すると、10年間で22,865人増加しています。 北海道の人口に占める割合は平成20年度(2008年度)末の0.5%から、平成30年度(2018年度)末で0.9%と0.4ポイント増加しています。 全国においては、1,062,700人で、人口比0.8%となっています。 ・発達障がい 発達障がいとは、発達障害者支援法により、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されており、平成22年(2010年)の改正で障害者自立支援法の対象として明確に規定されました。 さらに、平成23年(2011年)8月には障害者基本法が改正され、「障害者」の定義において「精神障害(発達障害を含む。)」と規定されました。 また、発達障害者支援法の施行から10年が経過し、平成28年(2016年)に法改正が行われ、支援の一層の充実が規定されました。 発達障がいは、個々によりその特性が異なり、本人や家族、周囲の人が個人の特性を理解し、その人にあった配慮や支援を行うことにより、持っている本来の力が活かされるようになります。 ・高次脳機能障がい 高次脳機能障がいとは、脳卒中などの病気や交通事故、頭部への怪我などにより、脳を損傷した後遺症としてみられる障がいです。脳損傷による認知機能障害(記憶障害や注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など)を主な症状として、日常生活や社会生活に制約が出ている障がいをさし、「器質性精神障害」として精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療(精神通院医療)の申請対象とされています。 また、手帳の有無にかかわらず、障害者総合支援法に基づくサービスの給付対象になることが可能です。高次脳機能障がいは、身体障がいがみられず、外見上は障がいが目立たないことから「見えにくい障がい」といわれ、障がいに関する十分な理解が得られていない実態があり、高次脳機能障がいのある人の正確な人数を把握できていないのが現状です。 (4)難病等 難病とは、原因不明で、治療が極めて困難で、希少であり、後遺症を残すおそれが少なくないことや、経過も慢性にわたり、生活面に長期に支障をきたす疾病です。 平成23年(2011年)8月に改正された障害者基本法において「障害者」の定義に含まれ、平成25年(2013年)4月の障害者総合支援法の施行により、「障害者」の定義に難病等(治療方法が確立していない疾病その他の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者)と明記され、難病等である人も障害福祉サービス等を利用できるようになりました。 また、対象となる疾病については、令和元年(2019年)7月に361疾病に拡大されています。 2 サービス提供体制の現状と評価 (1)サービスの利用状況 @障害福祉サービスの利用状況(令和2年(2020年)3月分) 障害福祉サービスの利用者は55,765人となっており、うち入所施設利用者が9,458人となっています。 また、第5期計画で定めたサービス見込量に対する令和元年度(2019年度)の実績では、施設入所支援が93.4%となっていますが、地域における居住サービスである共同生活援助は102.5%、訪問系サービスは80.9%、日中活動系サービスの生活介護は94.0%、就労継続支援(B型)が93.1%となっています。 A障害児通所支援等(用語解説9番)の利用状況(令和2年(2020年)3月分) 障害児通所支援の利用者は、児童発達支援で64,551人、放課後等デイサービスでは112,942人となっております。 (2)入所施設の状況 令和2年(2020年)4月1日現在の入所施設数は、204施設で定員は10,508人となっています。 また、令和2年(2020年)3月の入所施設の利用者数は、9,558人となっており、平成29年(2017年)3月利用者数から305人の減となっています。 (3)居住支援の状況 グループホーム(共同生活援助)は、障害者自立支援法の施行後、指定基準の規制緩和が図られたことなどにより、施行時点の平成18年(2006年)と比較すると定員の大幅な増加がみられます。 また、令和2年(2020年)3月利用者数は、12,189人となっており、平成29年(2017年)3月利用者から1,792人の増となっています。 (4)工賃(賃金)の状況 令和元年度(2019年度)における道内の事業所(就労継続支援事業所1,125か所)における月額一人当たり平均工賃(賃金)は、28,738円となっており、このうち、就労継続支援B型事業所(901か所)では、19,078円となっており、障がいのある人が、生きがいを持ち安心して地域で暮らせるようになるためには、工賃(賃金)向上に向けた更なる取組が求められています。 《工賃とは》 生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として施設や事業所等の利用者に支払うこととされています。(障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準等) 《賃金とは》 賃金、給料、手当、賞与その他名称を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます。(労働基準法) 《賃金と工賃について》 「賃金」と「工賃」は、ともに仕事・作業の対価として支払われるものですが、この計画においては、雇用関係において、企業、福祉工場、就労継続支援A型事業所等と雇用契約を締結する場合には「賃金」、就労継続支援B型事業所、地域活動支援センター・小規模事業所と利用契約を締結する場合には「工賃」としています。 (5)一般就労への移行状況 令和元年度(2019年度)における道内の福祉施設から一般就労への移行者数は1,113人となっており、平成17年度(2005年度)実績(105人)と比較し、10.6倍の増加となっています。 また、法定雇用率(用語解説10番)が適用される道内の民間企業(3,735社)の障がいのある人の実雇用率は2.27%であり、全国平均(2.11%)を上回っていますが、法定雇用率を達成している企業の割合は50.4%(1,883社)にとどまっているほか、障がいのある人を一人も雇用していない企業は30.8%(1,153社)と全国平均(30.0%)より高い水準にあります。(令和元年(2019年)6月1日現在)。 障がいのある人一人ひとりの意欲や障がい特性等に応じて、安心して一般就労に取り組むことができるよう、企業等と連携・協働した就労支援の充実・強化を図っていく必要があります。 《障害者雇用率制度について》 すべての事業主は、法定雇用率以上の割合で障がいのある人を雇用する義務があります。(障害者の雇用の促進等に関する法律) 法定雇用率は、平成30年(2018年)4月から算定基礎の対象に精神障がいのある人が追加されること等から、民間企業では2.0%から2.3%(当分の間2.2%)に引き上げられます。また、それに伴い、障がいのある人を雇用しなければならない事業主の範囲が、従業員50人以上から43.5人以上(当分の間45.5人以上)へと拡大されます。 (6)地域生活移行状況 平成31年(2019年)4月1日から令和2年(2020年)3月31日までの地域生活移行者数は、88人となっています。 また、地域生活移行先としては、グループホーム(共同生活援助)がもっとも多く57人(64.8%)となっています。 (7)特別支援学校卒業生の進路状況 道内の特別支援学校の令和2年(2020年)3月における高等部卒業者1,186人のうち、就職は443人で全体の37.4%、福祉施設利用は645人で全体の54.4%となっています。 特別支援学校を卒業した人が、身近な地域で生活することができるよう、在学中の就職支援の強化や地域のサービス基盤を整備していく必要があります。 (8)発達障がい者に対する支援の状況 平成28年(2016年)8月に施行された発達障がい者支援の一層の充実を図るため、発達障害者支援法が全般にわたって改正され、医療、福祉、教育、就労等の関係機関が相互に連携し、一人ひとりの発達障がいのある人に切れ目のない支援を実施することが目的に追加され、きめ細やかな支援を推進することとされました。 道では、北海道教育庁と共同し、また、「発達障害者支援(地域)センター(用語解説13番)」を設置し、地域で発達障がいのある人やその家族の支援を行う市町村や事業所等の関係機関への助言や人材育成を行い支援の充実を図るほか、フォーラムを開催するなど発達障がいの理解促進を行っています。 (9)障がい児に対する支援の状況 平成28年(2016年)6月の児童福祉法の改正に伴い、これまでの指定障害児通所支援事業に居宅訪問型児童発達支援が創設され、また、医療的ケア(用語解説14番)を要する障がいのある子どもが適切な支援を受けられるよう、自治体において保健・医療・福祉等の連携促進に努めるものとされました。 さらに、障がいのある子どものサービスに係る提供体制の計画的な構築を推進するため、自治体において障害児福祉計画を策定することとなりました。 また、子ども・子育て支援法の「すべての子どもが健やかに成長するように支援するものであって、良質かつ適切なものでなければならない」との基本理念に基づき、家庭、学校、地域、職域その他の社会のあらゆる分野における全ての構成員が各々の役割を果たすとともに、相互に協力を図り、障がいのある子どもとその家族に対し、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した効果的な支援を身近な場所で提供する体制を整備し、障がいのある子ども本人の最善の利益を保障する必要があります。 (10)医療を必要とする在宅障がい児(者)等に対する支援の状況 重症心身障がい児(者)や医療的ケアを必要とする在宅で暮らす重度障がいのある人が、地域で生活するためには、必要なサービス基盤を整備し、その家族の負担を軽減することが必要です。 (11)北海道障害者介護給付費等不服審査会等の状況(令和2年(2020年)3月31日現在) 障がいのある人又は障がいのある子どもの保護者は、市町村が決定した障害支援(程度)区分(用語解説15番)認定や支給決定などについて不服がある場合に、都道府県知事に対して審査請求をすることができます。 道では平成18年(2006年)4月に北海道障害者介護給付費等不服審査会、平成24年(2012年)4月に障害児通所給付費等不服審査会を設置し、審査請求があった事件について審議を行っています。 北海道障害者介護給付費等不服審査会には、平成18年(2006年)の新制度施行以降、129件の審査請求があり、うち98件が障害支援(程度)区分の認定に関するもの、29件が支給決定等に関するものとなっています。 なお、障害児通所給付費等不服審査会への審査請求はありません。 3 主なサービス提供基盤の整備状況 (1)基盤整備の状況(令和2年(2020年)3月31日現在) 障害者支援施設の定員数は、平成29年(2017年)と令和2年(2020年)を比較すると421名(3.9%)の減となっています。 また、就労継続支援A型は、適正な事業運営と就労の質の向上を図るため、平成29年(2017年)4月から運営基準等の改正が行われたことにより、事業所数が減少となっています。 (2)人材養成の状況 障がいのある人が各種サービス等の社会資源を有効に活用しながら生活することができるよう、相談支援業務に従事する人や居住系、日中活動系サービス事業者に配置が義務付けられているサービス管理責任者を、また、利用者に適切なサービスが提供されるよう、障害者総合支援法に定める障害支援区分認定関係者(認定調査員・審査会委員・主治医)を養成するための研修等を行っています。