第4計画推進のための具体的な取組 1 北海道障がい者条例の施策の推進 (1)北海道障がい者条例の施策の推進 【推進の視点】 ・障がいがあっても安心して地域で暮らすことができる社会づくりを目指し、障がいのある人の権利擁護と暮らしやすい地域づくりを推進することを目的に制定した北海道障がい者条例に基づく各種施策等の取組を進めることが必要です。 【推進施策】 ●北海道障がい者条例の主な施策(3つの柱)の推進 ・障がいのある人への「虐待」や「差別」を禁止するとともに、障がいのある人が障がいのない人と実質的に同等の日常生活を営むことができるようにするために必要な配慮(合理的配慮)に努めます。 ・道と地域づくりコーディネーター(用語解説19番)が連携し、地域づくりガイドライン(用語解説20番)を活用しながら、市町村が進める相談支援体制づくり等の取組を支援します。 ・「北海道障がい者就労支援推進委員会」を活用し、障がいのある人の就労支援の充実に努めます。 また、障がいのある人に対する支援はもとより、「働く障がい者」を支援する企業の取組の周知や指定法人(用語解説21番)を中心とした企業や事業所等の多様な就労支援のためのネットワークづくりなどを進めます。 ●北海道障がい者条例に関連する各種施策の推進 ・障がいのある人の権利を実現し、社会参加を確保するための社会生活に関する施策に当たっては、北海道障がい者条例の基本理念に基づき推進します。 [施策の推進に当たっての基本理念] @行政機関、学校、地域社会、道民、事業者その他関係団体が、相互に連携して社会全体で取り組むこと。 A障がい者への差別を防止し、障がい者の暮らしづらさを解消し、及び障がい者の権利を最大限に尊重すること。 B保健、医療、福祉、労働、経済、教育その他障がい者に関するあらゆる分野において総合的に取り組むこと。 C道内における地域間の格差の是正を図ること。 ●社会情勢に応じた条例内容の検討 ・障がい者施策に関する法律の施行などによる社会情勢の変化に応じて、条例の内容について検討します。 「合理的配慮」とは 北海道障がい者条例第20条では、障がい者が、障がいのない者と実質的に同等の日常生活又は社会生活を営むことができるようにするために必要な配慮をいうと規定されています。 2 権利擁護の推進 (1)暮らしづらさを解消するための取組 【推進の視点】 ・障がいがあっても安心して地域で暮らすことのできる社会づくりを実現するためには、障がいのある人の権利擁護と暮らしづらさの解消が必要です。 また、権利擁護を推進するため、関係する制度を道民に対し周知することが必要です。 【推進施策】 ●地域づくり委員会等の取組 ・全道14圏域に設置している「障がい者が暮らしやすい地域づくり委員会(用語解説22番)」において、中立・公平     また、道本庁に設置している「北海道障がい者が暮らしやすい地域づくり推進本部調査部会(用語解説23番)」において、地域づくり委員会から求められた全道的な見地から検討を要する課題等について審議し、解決を図ります。 ・市町村の協議会(用語解説24番)において、権利擁護や暮らしづらさの解消などについて地域の関係機関が協議し、課題を解決するという機能が十分発揮できるよう、地域づくりコーディネーターの支援を通じて、地域づくりガイドラインの活用を働きかけていきます。 ●制度の周知 ・「障がい者が暮らしやすい地域づくり委員会」について、広く道民に周知し、一層の活用を働きかけます。 ・障害者虐待防止法や障害者差別解消法など権利擁護に関する制度について、当事者及び福祉や教育の関係団体と連携しながら、普及・啓発を図ります。 ・ヘルプマーク(用語解説25番)やヘルプカード(用語解説26番)の普及を推進し、外見から分かりにくい障がいなど、周囲の方からの配慮を必要としている人への思いやりのある行動を促し、障がいへの理解を図ります。 ・「北海道障害者介護給付費等不服審査会」の審査を通じ、障がいのある人の障害福祉サービスの利用が適正に確保されるよう努めます。 ・DVDの貸出やインターネット上への動画のアップロードなど、映像等を活用して、学校や企業、生涯教育の場等を通じた障がいに (2)虐待の防止 【推進の視点】 ・虐待は、障がいのある人の尊厳を害するものであり、自立と社会参加のためには、障がいのある人に寄り添った虐待防止に向けた取組を一層進めることが極めて重要です。 【推進施策】 ・障害者虐待防止法に基づき道が設置している「北海道障がい者権利擁護センター」において、障がいのある人への虐待防止等を図るとともに、市町村が設置する「市町村障害者虐待防止センター」において、適切な事実確認や成年後見制度等を利用した養護者支援等が図られるよう支援します。 ・虐待を受けた人が、速やかに相談できるよう、相談先や通報先の周知徹底を図り、虐待を通報した人が、不利益な取扱いを受けないよう、関係機関に対して、障害者虐待防止法の趣旨についての理解・普及に努めます。 ・障害福祉サービス等、障害児入所支援及び障害児通所支援等を提供する事業所に対して、研修を実施するなどして虐待防止や権利擁護に関する指導を徹底するとともに、当該事業所等における障害者虐待に関する報告や通報があった場合には、市町村をはじめ関係機関と連携の上、障害者総合支援法に基づく監査等を実施し、当該事業者に対して障害者虐待防止法の規定による権限を行使するなど、速やかに対応します。 (3)差別等を解消するための取組の推進 【推進の視点】 ・障がいのある人もない人も、共に生きる社会を実現するために、障がいのある人への差別をなくすことを社会全体で進めていくことが必要です。 【推進施策】 ・平成28年4月に施行された障害者差別解消法について、市町村や障害福祉サービス事業所などの関係機関はもとより、広く道民に対し制度の普及・啓発を図ります。 ・北海道障がい者条例に基づく地域づくり委員会が、障がいのある人やその家族からの相談に応じ、協議やあっせんを行って解決を図ります。 ・地域における差別解消に向けた取組を円滑に行うため、関係機関によるネットワークづくりを進め、必要な情報交換や取組の協議を行います。 ・道は、障がいのある人の差別の解消に取り組むために作成した、職員の対応要領(用語解説27番)や事例集について、内容の充実に努めるほか、市町村に対し、引き続き職員の対応要領の作成や障害者差別解消支援地域協議会の設置を働きかけます。  ※職員対応要領「障がいのある方へのよりよい対応ができるサポートブック」 ※職員対応要領については、ホームページで公開しています (http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/shf/yoriyoitaiougadekirupe-zi.htm)  (4)意思決定支援の推進 【推進の視点】 ・自ら意思を決定することに困難を抱える障がいのある人が、自らの意思が反映された日常生活や社会生活を送るため、可能な限り本人が自ら意思決定できるよう支援することが必要です。 【推進施策】 ・相談支援専門員やサービス管理責任者における意思決定支援の質の向上を図るため、「意思決定支援ガイドライン(用語解説28番)」を活用するなどして研修カリキュラムの中に位置付け、研修の充実を図ります。 ・障がいのある人の中で、判断能力が十分ではない人が、不利益を被ることがないよう、市町村が成年後見制度(用語解説29番)の利用を推進するために国の助成事業を活用することや、後見等の業務を適正に行うことができる人材を育成することなどの取組を一層促すとともに、家庭裁判所や関係機関と連携し、広域的な見地から必要な助言を行うほか、北海道地域福祉生活支援センター(用語解説30番)が行う福祉サービスの利用援助・日常的な金銭管理などの取組について支援します。 3 地域生活支援体制の充実 (1)相談支援体制の確保 【推進の視点】 ・「希望するすべての障がい者が安心して地域で暮らせる社会づくり」を進めるためには、相談支援を中心とする地域の実情に応じた地域生活支援体制の充実が必要です。 また、相談支援事業所の地域移行支援の対象である救護施設等に入所している障がいのある人の地域生活移行についても取り組む必要があります。  さらに、市町村と緊密に連携し、障害児入所支援から障害福祉サービスへの円滑な支援の移行を図る必要があります。 ・障がいのある人及びその家族が抱える複合的な課題を把握し、適切な保健、医療、福祉サービス等につなげるとともに、市町村、相談支援事業所、その他関係機関との連携に努める必要があります。 ・障がい児相談支援についても、身近な地域において、障がいの気づきの段階から、障がいのある人に対する相談支援と同様に、障がいのある子ども本人やその家族に対する継続的な相談支援を行うとともに、質の確保及びその向上を図りながら、障がいのある人に対する相談支援へ円滑に移行できるよう、関係機関の連携体制の構築が必要です。 【推進施策】 ●生活全般を支える相談支援体制の構築 ・市町村を中心とするすべての障がいのある人を対象としたワンストップ(一か所ですべてに対応できる。)で、中立・公平な相談支援を行うため、地域づくりコーディネーターを活用し、総合的な相談業務等の拠点となる「基幹相談支援センター」の整備や、虐待に関する総合的窓口である「市町村障害者虐待防止センター」及び、差別に関する市町村の相談窓口の充実を図るとともに、市町村の協議会の機能強化を中心とした、地域における関係機関のネットワークの充実を図ります。 ・「基幹相談支援センター」の整備にあたっては、地域づくりコーディネーターを活用し、市町村の協議会で十分な議論を行い、地域の実情に合ったものを整備できるよう支援します。 また、すでに整備されている市町村についても、関係機関との連携の充実に向けて支援していきます。 ・地域において障がい者相談支援に関する指導的役割を担う主任相談支援専門員を計画的に養成します。 ・相談支援機能をはじめとする支援体制について、その目指す姿として「北海道障がい者条例」に基づき策定した「地域づくりガイドライン」をもとに、それぞれの地域を支援します。 その際、障がい者支援の観点から、地域の課題やニーズを把握し、検証・評価を行うとともに、その解決に向け、市町村等の関係者が一体となり、あらゆる地域資源の活用を検討しながら更なる強化・充実に向けて取り組(く)みます。 〈地域づくりガイドラインについて〉 地域づくりガイドラインとは、北海道障がい者条例第22条により、地域間の福祉サービス等の格差及び障がいの有無や程度による社会参加の機会の不均衡の是正を図りながら、障がい者が暮らしやすい地域づくりを推進するため、市町村が実施することが望ましい事項等の基本的な指針を定めたものであり、次の項目が盛り込まれています。 1 地域で暮らす障がい者に対する相談支援体制の確保 2 ネットワークの構築(市町村の協議会の設置・運営) 3 障がい者や障がい者の支援に関する社会資源の実態把握 4 地域住民と関係者との連携した障がい者の支援体制の確保(災害時の支援を含む) 5 障がい者の就労支援 6 調整委員会(地域で暮らす障がい者に対する暮らしづらさの解消を図るため、市町村が設置する協議組織) 7 その他(市町村の協議会の機能の確保) ・市町村における相談支援や権利擁護を充実するため、当事者の気持ちに寄り添い、きめ細やかな支援ができるピアスタッフ(用語解説31番)などの活用を図り、その活動を推進します。 ・難病患者や重症心身障がい児者、医療的ケアの必要な障がい児等の多様な障がい特性に応じた適切な支援についても、サービス等利用計画を作成する相談支援専門員に向けた研修などの機会を通じて、十分な理解が図られるよう支援するほか、地域づくりコーディネーターを活用し、利用者本位の計画策定について支援します。 ・道の地域相談員(用語解説32番)及び市町村の障害者相談員(用語解説33番)に対して、相談技術向上のための研修実施などについて支援していきます。 ・適切な支援の提供が障がいのある人の自立及び社会参加に資することも踏まえ、地域生活支援事業における障害者相談支援事業及び介護給付費等の支給決定事務に係る業務を適切かつ主体的に実施するため、市町村職員においては、一定の専門的知見を身につけるとともに、制度に対する理解を深めることが必要であるため、その知識の習得に向けて支援していきます。 ●専門的支援 ・地域において十分な専門性を確保することが困難な、発達障がいのある人に対する支援のため、「発達障害者支援(地域)センター」を活用した支援に取り組みます。 ・市町村が進める発達の遅れや障がいのある子どもの相談支援体制づくりを支援し、市町村が指定する指定障害児相談支援事業所を中心とした支援体制の充実に取り組みます。 ・地域で暮らす障がいのある人の就労を促進するため、就労面と生活面を一体的に支援する「障害者就業・生活支援センター(用語解説34番)」を中心とした支援体制の充実を図ります。 (2) 障がい者の地域生活への移行促進 【推進の視点】 ・全国と比較しても施設入所者が多い北海道において入所施設から地域生活への移行を促進するためには、施設入所者の意向把握、施設入所者に対する地域生活に関する説明、地域生活の体験、入所施設と受入地域との連携、地域生活移行後のフォローなど関係者が連携し、地域生活への移行促進を図ることが必要です。 ・相談支援事業所の地域移行支援の対象である救護施設(用語解説35番)等に入所している障がいのある人の地域生活移行についても取り組む必要があります。 ・市町村、児童相談所及び相談支援事業所と緊密に連携し、障害児入所支援から障害福祉サービスへの円滑な支援の移行を図る必要があります。 ・矯正施設(用語解説36番)等に入所している障がいのある人であって、退所後、自立した生活を送ることが困難であり、福祉サービスを受ける必要がある人には、退所後、支援を提供していくことが必要です。 【推進施策】 ・各圏域の地域づくりコーディネーターを活用し、各地域の基幹相談支援センター、相談支援事業所、ピアスタッフ等の関係者と連携を図りながら、施設入所者に対する説明、地域生活体験の受入地域との調整や地域生活移行後の事後フォローなど総合的な支援を強化します。 ・関係団体等との協力を得ながら定期的に施設入所者の意向把握が行われるような取組を進めます。 ・入所施設と相談支援事業所が連携し、サービス等利用計画と個別支援計画により的確に入所者の意向を把握するとともに、その後の実施状況の把握を行うことを通じて、地域生活移行のための支援に係るニーズ把握を進めます。 ・広域な北海道において、住み慣れた地域での生活の実現に向け、地域づくりコーディネーターが圏域を超えた必要な調整を行い、障がいのある人の地域生活移行を支援します。 ・救護施設に入所している障がいのある人の地域生活移行については、関係機関と協議、連携しながら取り組んでいきます。 ・障害児入所支援から障害福祉サービスへの円滑な支援の移行については、市町村、施設、学校及び障害者相談支援事業所等が連携、協議する体制を整備し、本人の意思を尊重し、適した進路支援に取り組んでいきます。 ・矯正施設等に入所している障がいがあって自立した生活を送ることが困難な人に対しては、退所後、障害福祉サービスに?がるよう矯正施設等、保護観察所、地域生活定着支援センター(用語解説37番)等と障害福祉サービス事業所等の関係機関との連携を促進します。 ・矯正施設等を退所した障がいのある人を受け入れる障害福祉サービス事業所等に対し、地域生活定着支援センターによる体制整備の助言や研修などを行い、地域の支援技術の向上を推進します。 (3)地域生活支援拠点等の整備 【推進の視点】 ・在宅で生活する障がいのある人の高齢化や重度化、さらには、生活を支えていた親が亡くなった後を見据えて、障がいのある人の地域生活を支える機能の充実を図る必要があります。 ・障がいのある人の自立支援のため、施設や病院からの地域生活移行や地域生活の継続支援、就労支援といった課題に対応したサービス提供体制を整え、障がいのある人を地域全体で支えるシステムを実現するための地域生活の拠点づくりを進めることが必要です。 ・地域生活支援拠点(用語解説38番)等については、地域生活移行や親元からの自立等に関する相談、一人暮らしのための体験の機会や場の提供、ショートステイを活用した緊急時の受け入れ、支える人材の確保や専門性向上、コーディネーターの配置などの地域の体制づくりといった機能が必要です。 ・地域生活の拠点づくりを進めるには、市町村の協議会などにおいて、障がいのある人やその家族、支援者などが参画して、各地域の既存の資源を活用するなど、実情に応じた整備方法について検討することが必要です。 【推進施策】 ●整備方法等 ・障がいのある人や障がいのある子どもの地域生活を支援するために、グループホームなどを活用した居住支援機能と相談などの地域支援機能を持ち合わせた「地域生活支援の拠点」を市町村において整備します。 ・地域生活支援拠点等については、身近な地域での支援が可能となるよう、道内のすべての市町村に整備することとします。 ・地域においてどのような体制を構築するかなどの、目指すべき整備方針の検討や、整備後においても、体制や機能が地域の実情に適しているか、地域の課題に対応できているか、中長期的に必要な機能を見直し検証していくこととし、これらの効果的な運営の継続の検討にあたっては、市町村の協議会等を十分に活用します。また、機能の充実に資するよう他市町村における好事例の紹介など必要な支援を行います。 ・広域、分散という北海道の地域特性を踏まえ、障がいのある人等の生活をより身近な地域で支える核として機能させるため、地域生活支援拠点等に関わるすべての機関及び人材の有機的な結びつきを強化し、高齢者福祉施策などの他施策や他職種と連携した整備を促進します。 ・道においては、地域生活への移行を推進する観点から入所施設の創設は基本的には行わないこととしていることや、地域が一体感をもった支援を行うため、複数の事業所が協力して機能を分担する面的整備を中心として整備をすることとします。 ・市町村によって利用者の状況やサービス事業者の整備状況が異なることなどから、複数市町村による共同整備も検討しながら整備を進めます。 なお、複数市町村による共同整備の検討に当たっては、「障がい福祉計画等圏域連絡協議会」の場を活用するとともに、地域づくりコーディネーターが支援します。 ・地域生活支援拠点等の整備に向けた取組が進んでいない市町村においては、既に整備が進んでいる地域の事例等も参考とし、地域におけるニーズの把握や課題の整理を早期に行い、積極的な整備に努めることとし、道においても、整備に向けて早期の検討を促すとともに、地域の現状や課題等を把握し共有するなど、継続的な支援を図ります。 ●機能の充実 ・地域における複数の事業所が協力して役割を分担する面的整備を中心に整備を進めることとしますが、社会資源に地域間格差が生じていることから、居住支援機能、相談及びコーディネート機能については、拠点構成市町村内の資源を活用し、その他の機能(体験の機会・場、緊急時の受け入れ・対応、専門性の確保)については、他市町村の資源も活用可能とし、既にある関係機関との連携体制を強化させるなどして整備を進めます。 ・原則5つの機能すべてを備えることとするが、必要な機能やその充足の程度については、地域の実情を踏まえて判断し整備を進めるよう、市町村に対し必要な支援を行います。 ・相談支援機能、地域の体制づくり、専門的人材の確保・養成及び、コーディネート機能については、コーディネーターの配置や「基幹相談支援センター」の体制整備を図ることなどを基本として体制の整備を進めます。 ・「基幹相談支援センター」が未整備な地域においては、複数市町村など広域での設置を促進します。 ・居住支援機能及び体験の機会・場の確保については、本人の希望や障がいの特性に応じたグループホームやアパートなど、多様な住まいの確保について市町村に対し必要な支援を行うとともに、障がいのある人の自立に向けて、グループホーム等の活用による一人暮らしの体験ができる場の拡充を図ります。 ・緊急時の受け入れ・対応の機能については、家族の休息(レスパイト)(用語解説39番)や緊急時の一時保護対応のため、短期入所や地域生活支援事業の日中一時支援を活用するなどの、連携体制の整備を進めます。 ・なお、地域生活支援拠点等の運営や機能の充実にあたっては、市町村等の協議会等において、十分に検討するものとします。 (4)自立と社会参加の促進 【推進の視点】 ・障がいのある人が自らの選択と決定により、自主的に行動し、その行動に責任を負うとともに、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加し、生きがいを持って生活できるような地域づくりが必要です。 【推進施策】 ●障がい者文化芸術活動の推進 ・障がい者の美術、演劇、音楽等をはじめとする多様な文化芸術活動を支援する拠点として位置づけられている「障がい者芸術文化活動支援センター」について、設置の必要性を検討します。 ・市町村や関係団体との連携により、障がいのある人が障がいのない人と同様に、芸術作品や演劇等を鑑賞し、また、障がいのある人自らの創造や発表の機会の確保を図り、障がいのある人が生きがいを持って日常生活を送ることができるよう支援に努めます。 ・障がい福祉サービス事業所等に対して、文化芸術活動の状況把握に努め、文化芸術の施策の反映に努めます。 ・関係団体等との連携により、障がいのある人の文化芸術活動を支援します。 ●読書バリアフリーの推進 ・点字図書館や地域の公共図書館など関係機関との連携を図るとともに、点字や音声で書籍等の情報を提供する視覚障害者情報総合ネットワーク(サピエ)(用語解説40番)の活用を促進し、視覚障がいのある人等が身近な地域において情報提供が受けられる体制づくりを進めます。 ・画面読み上げソフトや拡大読書器など、障がいのある人が情報を入手しやすくする用具の普及を促進するとともに、情報の入手や操作が困難な障がいのある人に対する支援を引き続き行います。 ・関係機関が行う点訳図書、DAISY図書作成のためのボランティア育成・確保について、支援します。 ●多様なニーズに対応した生きがいづくりの推進 ・障がいのある人のスポーツ活動やレクリエーション活動のすそ野を広げ、参加機会の拡大と交流を促進するとともに、芸術・文化活動の支援に努めます。 ・障がいのある人のスポーツ大会や芸術に関する情報などについて、関係団体と共有し、市町村に対して周知します。 ・障がいのある人が地域で様々な活動に参加し、生きがいを持って生活できるよう、市町村が実施する手話通訳の派遣や移動の支援、生活訓練、スポーツ・文化活動などの市町村地域生活支援事業を推進し、障がいのある人のニーズに応じた社会参加の促進に努めます。 ・教育機関との連携により、学習情報提供の充実を図り、障がいのある人の生涯学習への参加を促進します。 (5)ライフサイクルを通じた関係機関の連携強化 【推進の視点】 ・障がいのある人が地域で暮らすためには、乳幼児期から学齢期、学校卒業後の就労、地域生活といったライフサイクル全体を通じた、保育、保健、医療、福祉、教育、労働、司法、警察その他の関係機関の連携による重層的な支援が必要です。 また、年齢によって利用するサービスが変わっても、地域の関係機関の連携による継続した支援が必要です。 【推進施策】 ●保健・医療等関係機関との連携 ・障がいのある人が地域で生活するために必要な保健・医療サービスを適切に受けられるよう、保健・医療関係機関等のネットワークの構築や連携強化に取り組みます。 ●福祉等関係機関との連携 ・社会福祉協議会や、自立相談支援機関(用語解説41番)、サービス提供事業者等の福祉関係機関・団体及び、ボランティア団体と連携し、誰もが暮らしやすい地域づくりを推進します。 ●教育等関係機関との連携 ・子どもたちが、能力や可能性を伸ばし、自立や社会参加が図られるよう、北海道教育庁が進める特別支援教育と、保育、保健、医療及び福祉関係機関等と連携し、一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援を推進します。 ・地域で企画される各種行事や保育所、学校での交流、ボランティア活動への参加など、障がいのある人との交流体験を通じた福祉教育への機会の増加について市町村に働きかけます。 ●労働等関係機関との連携 ・障がいのある人が、本人の希望や適性等に応じて、地域においていきいきと働き、社会参加ができるよう、障害者就業・生活支援センターを中心に構築したネットワークなどを活用し、企業や労働関係機関、自治体等との連携や協働を推進します。 ●関係機関相互の連携 ・市町村の協議会を中心に、保健、医療、福祉、教育、労働、その他障がいのある人に関する地域の関係機関が相互に連携し、ライフステージ(用語解説42番)に応じた支援の充実に努めます。 また、事件に巻き込まれないように、未然に防止することや被害者となった場合の適切な支援について、司法、警察等と連携して進めます。 4 北海道意思疎通支援条例・手話言語条例の施策の推進 (1)北海道意思疎通支援条例の施策の推進 【推進の視点】 ・障がいのある方の意思疎通の妨げとなる社会的障壁を解消して、障がいの有無に関わらず、全ての道民がみんなで共生する暮らしやすい社会の実現を目的に北海道意思疎通支援条例に基づく各種施策等の取組を進めることが必要です。 【推進施策】 ●理解の促進 ・障がいや障がいのある人への理解が深まるよう、広報誌やDVD(映像)、インターネット(動画配信)などの様々な情報媒体を活用し、ノーマライゼーションの理念の普及を図ります。 ・障がいのある人や家族、地域の支援者、就職先となる企業等へ正しい情報をわかりやすく伝えるため、映像資料等を活用し、当事者、支援者団体等と連携した情報提供の仕組みづくりを進めます。 ●意思疎通手段の確保等 ・障がいのある人に対する意思疎通支援など、コミュニケーションが図りやすい環境の整備を進めます。 ・点字、手話、要約筆記、触手話、コミュニケーションボード等、障がいの特性に応じた意思疎通支援ツールの確保のため、意思疎通手段の習得の取組を支援するほか、意思疎通手段が使いやすい環境の整備に努めます。 ●情報保障の推進 ・点訳奉仕員や手話奉仕員等の意思疎通支援人材の育成・派遣、災害発生時の情報発信拠点等のため、道内の視覚障がい者及び聴覚障がい者に係る情報提供施設を支援します。 ・障がいのある人の情報の利用におけるバリアフリー化を推進するため、情報通信機器等に関する情報提供に努め、普及や利用の促進を図ります。 ・障がいの特性に応じた多様な意思疎通手段があることについて、道民の理解促進や普及啓発を図ります。 ●意思疎通支援者の養成及び派遣の推進 ・点訳奉仕員、朗読奉仕員、手話通訳者(手話奉仕員)、要約筆記者(要約筆記奉仕員)、盲ろう者通訳・介助員、失語症者向け意思疎通支援者等、意思疎通支援者の養成・派遣については、道、市町村がそれぞれの役割を担った上で関係機関と連携し、道内の意思疎通支援の向上を図ります。 ・市町村に対し、障がいの特性に応じた意思疎通支援者の養成及び派遣体制の充実について働きかけます。 ・障がいのある人のコミュニケーションを確保するため、市町村や関係団体等と連携し、手話通訳者、要約筆記者等の養成や資質の向上などを図り、その基盤となる人材の育成に努めます。 (2)北海道手話言語条例の施策の推進 【推進の視点】 ・道民に手話が言語であることを広く認識していただくことや手話を習得する機会の確保に取り組むことにより、これらを広め、手話を使いやすい社会の実現を目的に北海道手話言語条例に基づく各種施策等の取組を進めることが必要です。 【推進施策】 ●道民の理解促進等 ・手話が独自の言語であることについて、広報誌やインターネット等の様々な情報媒体を通じて周知し、道民の理解促進や普及啓発を図ります。 ・市町村と連携して、小中学生への手話講座等の実施により、児童・生徒の時期に手話を知る機会の確保に努めます。 ・経済団体、建築団体など道内の関係団体に対して、手話が独自の言語であることについての情報提供などを行います。 ・道民向けにインターネット(動画配信)を活用した手話講座を実施するなど、道民が広く手話を習得する機会を設けます。 ・道職員を対象にした手話講座の実施により、道職員が率先して手話を用いるよう取り組みます。 ●手話を習得する機会の確保 ・道教委と連携して、聴覚に障がいのある人が、乳幼児期から家族も含めて手話を習得する機会を確保します。 5 サービス提供基盤の整備 (1)住まいの基盤整備の充実 【推進の視点】 ・地域生活において欠かせない住まいを基本としたサービス基盤の整備が必要です。 【推進施策】 ●住まいの確保 ・障がいのある人が円滑に地域生活移行できるよう、社会福祉施設等施設整備事業などを活用し、グループホームの計画的な整備を促進するほか、障がいのある人の安全を図るため、災害発生時における老朽化施設に対する耐震化整備などの防災対策や、ウイルス性感染症の感染拡大防止を図る整備を促進します。 ・相談支援事業所や市町村等と連携し、施設や病院から地域生活移行を希望する障がいのある人の居住の確保に向けた支援を行います。 ・障がいのある人の見守り等を行う相談支援事業所の地域定着支援を活用することにより、公営住宅や民間住宅における一人暮らしが可能となる支援をします。 ・障がいのある人が住まいを確保できるよう、障がいのある人などの入居を拒まない民間賃貸住宅である「住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅(用語解説43番)(セーフティネット住宅)」や入居相談、入居後の見守りなどを行う「住宅確保要配慮者居住支援法人」について、相談支援事業所に情報提供するなどして、障がいのある人への利用を促進します。 ・地域生活移行を推進するためにも、グループホームをはじめとする多様な住居の確保について市町村等に対して必要な助言を行います。 ●環境の整備 ・「北海道福祉のまちづくり条例(用語解説44番)」などに基づき、誰もが安心で快適に生活できる福祉のまちづくりを総合的に推進するとともに、障がいのある人等の利用に配慮した建物づくりや、積雪寒冷な地域における必要な配慮のほか、障がいのある方を含むすべての人々が、お互いに理解を深め、支え合う「心のバリアフリー」を推進し、福祉環境の整備を促進します。 ・障がいのある人も安心して暮らせるよう、公営住宅等におけるユニバーサルデザインの普及促進を進めます。 (2)日中活動サービスの充実 【推進の視点】 ・地域で生き生きと生活できるよう、障がいのある人が希望する日中活動サービスを保障することが必要です。 【推進施策】 ●多機能型サービスの基盤整備 ・身近な地域に必要な日中活動の場を確保するため、多機能型サービスの基盤整備を促進します。 ●日中活動の場の整備 ・地域生活への移行を進め、能力や適性に応じた就労ができるよう、就労移行支援事業や、就労継続支援事業、自立訓練等の日中活動の場を確保するため、社会福祉施設等施設整備事業などを活用し、整備を促進します。 ・地域での自立した生活には、日中活動及び地域交流の場の充実も必要であることから、市町村における地域活動支援センターや日中一時支援事業などの実施を推進します。 ・地域の医療機関や障害福祉サービス事業所等と連携し、重症心身障がいや医療的ケアの必要な在宅の障がいのある人の日中活動への参加や家族の休息(レスパイト)の確保など地域生活を支援する体制の充実に努めます。 (3) 地域生活を支えるサービス基盤の充実 【推進施策】 ●サービス基盤の整備 ・障がいのある人が必要なサービスを利用しながら、地域で生活することができるよう、施設機能の転換や介護保険法に基づく通所介護事業所、地域包括支援センターなどの既存社会資源のほか、地域づくり総合交付金等を活用した施設整備や人材育成などにより、地域特性を踏まえた、取組を推進します。 ・地域での生活や余暇活動に欠かせない移動に関する支援(居宅介護・重度訪問介護・行動援護・同行援護・移動支援事業)、意思疎通支援等の充実を図ります。 ・身体障がいのある人の移動や日常生活をサポートする補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)について、道民の理解や利用の促進を図るため普及啓発に努めるとともに、その育成等を推進します。 ・ノンステップバスの導入促進など、障がいのある人等が公共交通機関を円滑に利用できるよう、移動・交通のバリアフリーを促進します。 ・道路沿いや観光地などでの車いす使用者等が利用しやすい多機能トイレなどの整備を促進します。 ・障がいのある人に対する公共交通機関の運賃割引制度などについて、精神障がいのある人等も対象に加えるよう、引き続き国や関係機関に要請します。 ●地域の人材育成等 ・共生の社会づくりを進め、地域の実情に応じた支援者の育成や市町村における地域での見守り活動等を推進します。 ・ボランティアの育成等の充実に努め、道民や団体によるボランティア活動を促進します。 ・子ども、高齢者、障がいのある人を問わずだれもが暮らしやすい地域づくりのため、多様な事業を展開する地域生活支援事業を推進します。 (4)共生型地域福祉拠点の取組の推進 【推進の視点】 ・道内各地域において、障がいのある人もない人も共に支え合いながら暮らすことのできる地域づくりを広げるためには、高齢者やボランティアなど様々な地域住民が参画しながら制度・分野を超えて、住民の生きがいづくりや地域づくりに取り組む共生型地域福祉拠点の取組を推進することが必要です。 【推進施策】 ・全国に比べ人口減少や少子高齢化が急速に進む本道の特性を踏まえ、複雑多様化するニーズに身近な地域で対応していくため、住民同士の支え合いなどにより地域課題の解決などに取り組む共生型地域福祉拠点の取組を推進します。 ・基盤整備、相談支援、日中活動の場、住まいの場、就労などあらゆる場面において、住民の主体的な支え合いを育み、暮らしに安心感と生きがいを生み出していくため、介護保険法に基づく通所介護事業所、地域包括支援センターなどの既存の社会資源のほか、地域づくり総合交付金等を活用した施設整備や人材育成などにより、地域特性を踏まえた取組を推進します。 ・既存の共生型地域福祉拠点における取組事例の紹介や共生型コーディネーター養成研修のテキストの周知等により、市町村や関係団体の取組を推進します。 (5)地域間格差の縮小 【推進の視点】 ・障がいのある人がどこに暮らしていても必要なサービスが受けられるよう、地域間の均衡に配慮した基盤整備を進めることが必要です。 【推進施策】 ●居住系サービス(施設入所支援) ・地域生活への移行支援を推進する観点から、現在入所している方について、円滑に地域生活への移行が図られるような体制の整備を進めるとともに、施設入所支援を必要とする障がいのある人の状況を考慮し、全道一圏域で広域的に入所定員の調整を行います。 ●居住系サービス(共同生活援助)及び日中活動サービス ・グループホームなどの住まいの場や、生活介護及び就労継続支援などの日中活動の場については、利用者の生活圏域(通所等によりサービスの相互利用が可能な単位)に着目してサービスの基盤整備を進める必要があることから、障がい保健福祉圏域単位で必要なサービス基盤の整備について調整を行います。 ●訪問系サービス及び相談支援 ・居宅介護などの訪問系サービスについては、在宅において提供することを基本とすることから、市町村単位で地域生活への移行の進捗状況に合わせて、必要なサービス基盤の整備について調整を行います。 ・相談支援については、地域生活への移行や地域定着支援の観点から、市町村単位で必要な体制整備について調整を行います。 ●調整の方法 ・圏域ごとに設置している障がい福祉計画等圏域連絡協議会において、入所(入院)・通所・居宅などのサービス基盤全体の整備量を整理し、計画的な基盤整備が行えるよう市町村との連携を図ります。 ・市町村に対して、新規参入事業者など指定事業者の情報を提供するほか、不足しているサービス事業者の参入について、市町村による法人等への働きかけなどを助言します。 ●北海道障がい者条例に基づく地域づくり委員会の活用 ・地域づくり委員会を活用し、市町村や市町村の協議会と連携の上、地域で必要とするサービスの提供体制の整備に向けた支援を行うことにより、障がいのある人の暮らしづらさを解消します。 ●サービスを担う人材の確保 ・サービス事業者の参入を進めるためには、その地域において働く人材が供給されることも重要であることから、市町村に対し、人材に関する情報の提供に努めます。 (6)施設による支援 【推進の視点】 ・障害者支援施設を利用している人の暮らしの充実や、地域で暮らす障がいのある人を支援する取組が必要です。 【推進施策】 ・障害者支援施設を利用している人の意向に沿ったサービス等利用計画の作成と、それを踏まえた個別支援計画に基づき、利用している人の施設での暮らしを充実させます。 ・障害者支援施設において、生活介護、就労継続支援、短期入所などを実施し、地域で生活する障がいのある人を支援する取組を促進します。 ・児童施設から移行して障害者支援施設を利用する人に対しても、必要な支援が継続されるよう支援します。 6 障がい児支援の充実 (1)子どもの発達支援の充実 【推進の視点】 ・障がいのある子どもは、他の子どもと異なる特別な存在ではなく、同じ子どもであるという視点に立って、子ども・子育て支援法に基づく子育て一般施策の育ちの支援とともに、発達の段階や個々の障がい特性に応じて障がい児支援が連携し、障がいのあることが大きな不安や負担とならないよう、子どもとして健全に育つ権利を保障することが必要です。 ・障がいのある子どもの支援を行うにあたっては、その気づきの段階から、身近な地域で子ども本人の最善の利益を考慮することが重要です。 ・障がいのある子どものライフステージに沿って、地域の保健、医療、障害福祉、保育、教育、就労支援等の関係機関が連携を図り、切れ目の無い一貫した支援を提供する体制の構築を図る必要があります。 ・障がいのある子どもが、地域の保育、教育等の支援を受けられるようにすることで、障がいの有無にかかわらず、すべての児童が共に成長できるよう、地域社会への参加やインクルージョン(包容)を推進する必要があります。 ・ 障がいのある子どもへの対応については、可能な限り早期に療育を開始し、基本的な生活習慣の習得や運動機能の発達を支えるとともに、社会性の育成などに配慮が必要です。 【推進施策】 ・障がいのある子どもとその家族への支援が身近な地域で受けられるよう、乳幼児健康診査などの母子保健サービスや子育て支援等の中での早期相談、家族への受容や気づきに配慮した申請によらないサービスの利用、制度や資源につなげるつなぎの支援や、障がいのある子どもの発達支援に着目した専門的な支援など、市町村において包括的な子ども発達支援体制の整備が図られるよう支援します。 ・地域づくり委員会や地域づくりコーディネーター等による障がい保健福祉圏域内の関係機関のネットワークを構築し、さらに連携強化を推進し、市町村における子どもの発達支援をサポートします。 ・市町村において実施が困難な専門的支援については、子ども総合医療・療育センターや旭川子ども総合療育センター、発達障害者支援(地域)センターから、広域的に実施するとともに、圏域内の関係機関等に対する研修や情報交換等の機会を通して、地域の人材育成等を推進し、支援体制の充実を図ります。 ・障がいのある子どもに対する相談支援、通所支援、入所支援のサービス提供基盤となる施設や事業所等の整備を推進するとともに、医療、教育との連携はもとより、子育て一般施策における障がい児支援との連続・連携した支援や、家庭的な養育環境を提供する里親制度の活用などについて推進します。 ・障がいへの気づきの段階から身近な地域で支援できるように、障がい種別にかかわらず、質の高い専門的な発達支援の充実を図るとともに、どの地域においても等しく一定の支援が受けられるよう地域支援体制の構築を図ります。 ・発達障がいのある子どもについては、早期に発達の遅れや偏りに気づき支援につなげるため、発達障がいへの理解を促進する取組を進めるほか、発達障害者支援(地域)センターが、地域で直接支援を行っている保育所、学校、事業所等へ専門的な支援技術への助言を行い、支援の質の向上等を促進します。 ・児童発達支援センターの設置を推進するほか、施設基準を満たせずに同センターを設置できない場合には、保育所等訪問支援、障害児相談支援等の指定を受け児童発達支援センターと同等の機能を有する市町村中核子ども発達支援センター(用語解説45番)の整備を進めます。 その市町村中核子ども発達支援センターの整備に当たっては、障がいの重度化・重複化や多様化に対応する専門的機能の強化を図った上で、地域における中核的な支援施設として認定し、発達の遅れや障がいのある子どもとその家族、その子どもが通う保育所、幼稚園、学校や認定こども園その他集団生活を営む施設からの相談対応や助言その他の必要な援助を行います。 また、障害児通所支援事業所等と緊密な連携を図るとともに子ども総合医療・療育センター、旭川子ども総合療育センター、緑ヶ丘病院、児童相談所及び発達障害者支援(地域)センター等による後方支援を行うなど重層的に障がいのある子どもへの支援体制の整備を進めます。 ・難聴がある子どもについては、早期に聞こえにくさに気づき、ことばや知識を学ぶための適切な支援を行うことが重要であることから、コミュニケーションを築くうえで必要な集団適応を早期に身につけるため、新生児聴覚検査から療育につなげる体制整備のための協議会の設置や、新生児聴覚検査から療育までを遅滞なく円滑に実施するための手引書の周知等、新生児聴覚スクリーニングや乳幼児健康診査の際になるべく早く難聴に気づき、療育につなげる取組を進めます。 ・難聴がある子乳幼児及びその家族が、身近な地域において適切な相談支援及び療育を受けることができるよう、市町村、医療機関、道立聾学校等が連携し、難聴を起因することばの遅れや、コミュニケーションへの影響、知的、社会的発達の遅れを未然に防ぐ、または最小限にとどめるため、可能な限り早期に療育につなげ、専門的な支援による乳幼児期の発達の促進を図るなど、難聴児支援のための中核的機能を有する体制の確保を進めます。 (2)家族への支援 【推進の視点】 ・障がいのある子どもの家族の子育て不安を軽減し、子育てに自信が持てるよう、発達の各段階に応じて子どもの発達を支援するとともに、家族を含めたトータルな支援が必要です。 ・家族への支援に当たっては、子ども・子育て支援法に基づく子育て一般施策との緊密な連携を図る必要があります。 【推進施策】 ・障がいの受け止めや将来に対する不安などを抱えている家族に対して、保健センターや保健所、児童相談所、療育機関など関わりを持つ機関の専門家が、心理的なケアやカウンセリング等の支援を行うほか、ペアレントメンター(用語解説46番)による相談活動や親の会活動などと有機的な連携を図り、家族への支援の充実に努めます。 ・身近な場所において、子育てに関する相談支援や情報提供等を総合的に行うとともに、地域の子育て親子の交流などが図られるよう、支援に努めます。 ・家族の精神的・肉体的負担を軽減するため、身近な地域で短期入所等が利用できる体制整備に努めます。 ・子どもに障がいがあることによって就労が制限されることのないよう、家族の就労のための支援に努めます。 ・障がいのある子どものきょうだいの支援も重要であることから、きょうだい支援の活動をしている団体等と連携した心の支援の取組を進めます。 ・子どもを育てる保護者が、子どもとのよりよい関わり方を学びながら日常の子育ての困り事を解消し、楽しく子育てが出来るよう、地域での保護者支援の充実を図ります。 (3)福祉、保育、保健、医療、教育、就労支援等の関係機関と連携した支援 【推進の視点】 ・障がいのある子どもへの発達支援は、子ども本人が支援の輪の中心となり、様々な関係者や関係機関が関与して行われる必要があり、連携を密にし、情報を共有することにより、障がいのある子どもに対する理解を深めることが必要です。 ・就学前、学齢期、卒業時などを通じて一貫した指導や支援が行われるよう、教育委員会、学校等と、福祉や就労との連携が必要です。 【推進施策】 ・市町村の障害児支援担当部局、母子保健や子ども・子育て支援、社会的養護等の児童福祉担当部局、保健センター、病院・診療所、訪問看護ステーション、児童相談所、発達障害者支援(地域)センター、障害児相談支援事業所、保育所、認定こども園、幼稚園、学校、特別支援学校、児童委員等の関係機関と連携を図り、支援が必要な子どもと保護者の支援が保育所や学校そして就労等に適切に移行され、適切な支援が引き継がれていく体制を整備します。 ・子どもの発達の遅れ、偏りについては、乳幼児健康診査、市町村保健センター等の発達相談、保育所、幼稚園、学校等の利用等を通して気づく場合があり、気づきの段階から継続的な支援を行うため、母子保健や子ども・子育て支援等の関係者や関係機関と連携した支援を進めます。 ・障がいの早期の発見及び支援並びに健全な育成を進めるため、乳幼児健康診査等の母子保健施策との緊密な連携を図るとともに、日頃から障がいのある子どもに関わる部局と、子育て支援担当部局、保健医療担当部局や教育委員会との連携を密に図る体制づくりを進めます。 ・市町村で保健・福祉・教育等との連携を促進するため、振興局が行う発達支援に関わる関係職員の研修と教育局が行う特別支援教育に関わるセミナーを合同で開催するなどし、関係機関における情報の共有化を図ります。 ・障がいのある子どもへの支援が適切に行われるために、学校、障害児通所支援事業所、障害児入所施設、障害児相談支援事業所、就労移行支援事業所等の障害福祉サービスを提供する事業所等が緊密な連携を図り、就学時及び卒業時において、支援が円滑に引き継がれる体制の整備を進めます。 ・幼児期から学齢期、就労期へと一貫した支援が行われるよう、乳幼児期からの支援ファイルと学校等で作成される個別の教育支援計画を一体的に活用するとともに、サービス利用の際の障害児支援利用計画等や事業所で作成される個別支援計画等とも連動した支援を進めます。 ・市町村における自立支援協議会と市町村特別支援連携協議会、障がい福祉計画等圏域連絡協議会と各教育局に設置している特別支援連携協議会、道本庁に設置する発達支援推進協議会と広域特別支援連携協議会がそれぞれ連携した、福祉と教育及び関係機関による重層的な支援体制を推進します。 (4)地域社会への参加・インクルージョン(包容)の推進 【推進の視点】 ・障がいのある子どもが障がい児支援を利用することにより、地域の保育、教育等の支援を受けられるようにすることで、障がいの有無にかかわらず、すべての子どもが共に成長できるよう、地域社会への参加やインクルージョン(包容)を推進する必要があります。 ・可能な限り、地域の保育、教育等の支援を受けられるようにしていくとともに、同年代の子どもとの仲間作りを図っていくことが求められます。 【推進施策】 ・障害児通所支援事業所、児童発達支援センター等が保育所や認定こども園、放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)、幼稚園、小学校及び特別支援学校等の育ちの場での支援に協力できるような体制を構築することにより、障がいのある子どもの地域社会への参加・包容の推進を図るとともに、保育所等訪問支援による、障がいのない子どもとの集団生活への適応、障がいのある子ども本人への支援や訪問先施設等の職員に対する支援方法等の指導等を行います。 (5)障がい児支援体制の基盤整備 【推進の視点】 ・発達の遅れ、偏りや障がいのある子どもの心身の状況に応じ、自立の支援と日常生活の充実に資することが重要です。このため、発達の遅れや障がいのある子どもとその家族が、発達の遅れに気づいた段階から、できるだけ身近な地域で利用しやすい支援が受けられるよう、「障害児相談支援(用語解説47番)」や、「障害児通所支援」、「障害児入所支援」の基盤整備が必要です。 ・広域分散型の北海道にあって、どこに暮らしていても、より身近な地域で支援が受けられるとともに、どの障がいにも対応できるようにする一方で、障がい特性に応じた専門性の確保が必要です。 ・障害児通所支援、障害児相談支援における障がい児及びその家族に対する支援について、障がい種別や年齢別等のニーズに応じて、身近な場所で提供できるよう、地域における支援体制の整備が必要です。 ・障害児入所支援では、小規模なグループによる支援や心理ケアを提供することにより、障がいのある子どもの状況に応じたきめ細やかな支援を行う必要があります。 【推進施策】 ●障害児相談支援の整備 ・身近な地域において、障がいに気づいた段階から継続的な相談支援が利用できるよう、地域づくりコーディネーターのサポートなどにより、市町村における相談支援体制づくりを支援します。 ・市町村が関係機関の連携のもとで、ライフステージに応じた支援体制が確保できるよう、相談支援専門員の育成、資質及び専門性の向上に向け取組を進めます。 ・家族の子育てに対する不安感に寄り添い、早期発見、早期支援が促進されるよう、ペアレントメンターの養成等、家族に対する支援体制の整備を図るほか、障がいのある子どもが待機することなく適切な診療、療育を受けることができる体制づくりを支援します。 ●障害児通所支援の整備 ・障がいの重度化・重複化や多様化に対応する専門的機能の強化を図ったうえで、地域における中核的な支援施設として、「児童発達支援センター」や同等の機能を有する「市町村中核子ども発達支援センター」を活用し、障害児通所支援等を実施する事業所と緊密な連携を図り、重層的な障害児通所支援体制を推進します。 ・障害児通所支援事業所は、障がいのある子どもに対し、質の高い専門的な発達支援を行う機関であることから、児童発達支援センター及び同等の機能を有する市町村中核子ども発達支援センター等が中心となり、障害児通所支援事業所に対して助言等を行う体制を推進します。 ・子どもに関わる機関の連携体制を整備し、支援の一層の充実を図るため、各圏域内に児童発達支援センター又は市町村中核子ども発達支援センターの設置を推進します。 ・児童発達支援センターの施設基準を満たしていなく指定を受けられないが、保育所、学校等の集団生活を営む施設からの相談に応じ、援助を行うなど地域連携を進める市町村子ども発達支援センターを児童発達支援センターと同等の機能を有する機関と認定し、より多くの圏域において連携体制の整備を進めます。 ・障害児通所支援事業の質の向上を図るため、関連施設との連携を促進するとともに、事業所の指定、指導監査、人材育成の研修等のあらゆる機会に「児童発達支援ガイドライン(用語解説48番)」等を活用し、より一層の支援の充実を図ります。 ・地域における重層的な支援体制を構築するため、道立施設や発達障害者支援(地域)センターなどからの専門的支援のシステムづくり及び地域支援を進めます。 ●障害児入所支援の整備 ・障害児入所施設を利用する子どもとその家族への支援については、自立支援協議会等の場を活用し、市町村、障害児入所施設、児童相談所、保健センター、医療機関、相談支援事業所、学校及び障害福祉サービス事業所等と連携し、入所施設を利用する前からそれぞれの支援体制を確認し、退所後の支援を見据え、連絡調整を図っていきます。 ・施設を利用する子どもの中には虐待を受けた子どもが多くいることから、その支援に当たっては、より細やかな対応を行う必要があり、施設の状況に応じて、小規模グループケアの導入を検討するとともに、入所施設の専門機能の強化を支援します。 ・入所施設は様々なニーズに対応する機関として位置づけられている一方、北海道では、入所施設が設置されていない圏域がある現状から、地域の実情に応じ、入所施設以外の小規模な施設等の活用を図ることにより、身近な地域で家庭的な生活が提供される環境づくりを推進します。 ・18歳を迎える子どもが、退所後も安心して生活できるよう、入所中から、日中活動の体験利用や宿泊体験、自立支援協議会等の場を活用し、市町村、障害児入所施設、児童相談所、保健センター、医療機関、相談支援事業所、学校及び障害福祉サービス事業所等の職員等の連携のもと、その子に適した進路支援を行う体制を整備します。 ・社会的養護の必要な障がいのある子どもの措置に関しては、障がいの程度や地域特性等により、障がいのない子どもを含めた集団の中で育ちをできるだけ支援することも含めて対応します。 (6) 特別な支援が必要な子どもへの支援 【推進の視点】 ・被虐待や社会的養護等の特別な支援が必要な障がいのある子どもへの支援が必要です。 【推進施策】 ・児童養護施設や里親等を活用している障がいのある子ども、あるいは、家庭で養育されている障がいのある子どもに対し、児童相談所や市町村と連携し、障がい児支援の専門性を活かした支援の提供について検討します。 7 発達障がいのある人や医療的ケアの必要な在宅の障がいのある人等への支援 (1) 発達障がいのある人への支援の充実(じゅうじつ) 【推進の視点】 ・発達障がいは、個々によりその特性が異なり、できるだけ早期に適切な支援を行うことが重要であり、障がいの早期発見と、特性に応じた援助並びにその家族に対する支援の充実を進めることが必要です。 ・身近な地域において、必要な支援が得られるよう取組を推進するとともに、多くの道民が発達障がいを正しく理解のするための普及啓発を図ることが必要です。 【推進施策】 ・発達障がいに関する課題について、関係機関と情報共有を図り、地域の実情に応じた支援体制等について、発達支援推進協議会において、意見交換を行い充実を図ります。 ・発達障がいのある人やその家族を取り巻く環境について、乳幼児期、学齢期、就労期等、一貫した切れ目のない支援が行えるよう、適切に引き継ぎを行うなど、関係機関との連携を促進します。 ・発達障がいのある人やその家族が、可能な限り身近な地域において必要な支援が受けられるよう、発達障害者支援(地域)センターが地域づくりコーディネーターと協働し、地域の医療、保健、福祉、教育等の関係機関や民間団体との連絡調整、情報提供及び研修を実施するとともに、発達障害者支援(地域)センターにおいて、発達障がいのある人やその家族に対し、市町村等では対応が困難な真に必要な相談について、地域の支援者と一緒に個別の相談支援を行い、地域の相談支援体制づくりを推進します。 ・発達障がいの特性などに対する理解の促進を図るため、フォーラムやパネル展の開催など道民の方々への幅広い啓発活動を推進し、相談支援機関や、発達障がいに関する診療を行っている医療機関等の情報をホームページ等により提供します。 (2) 医療を必要とする在宅の障がい児者等への支援 【推進の視点】 ・重症心身障がいや医療的ケアの必要な在宅の障がいのある人が、住み慣れた地域で安心して生活するためには、身近な地域で心身の状況に応じた支援を受けることが重要であり、支援を行うに当たって、その人数や受けているサービスなどの現状等を把握するとともに関係機関が連携を図り、子どもから大人まで切れ目の無い一貫した支援を提供する地域の支援体制の構築が必要です。 ・障がいのある人が自立した日常生活や社会生活を営むためには、育成医療をはじめとする自立支援医療(用語解説49番)等の適切な提供が必要です。 【推進施策】 ● 支援体制の充実 ・広域分散の地域特性を有する本道において、重症心身障がいや医療的ケアの必要な在宅の障がいのある人への支援の推進を図るため、道、圏域、市町村において、関係者の協議の場の設置を進めるほか、関係機関や「特別支援学校における医療的ケア連絡協議会」等との連携促進を図り、その支援が学齢期から成人期に円滑に引き継がれるよう努めます。 ・地域の医療機関、障害福祉サービス事業所等や市町村と連携し、重症心身障がいや医療的(てき)ケアの必要な在宅の障がいのある人の日中活動への参加や家族の休息(レスパイト)の確保など、地域生活を支援する体制の充実に努めるとともに、できるだけ身近な地域において必要なサービスが受けられるよう、短期入所等のサービス提供を行う事業所の増加に向けた取組を進めます。 ・直接的なサービス提供の担い手となる看護師等従事者の育成、確保を図るため、地域の医療機関や障害福祉サービス事業所等の職員を対象に、重症心身障がいのある人への支援方法等に関する研修や、適切な医療的ケアを行うために必要な知識、技術などに関する研修を関係団体等と連携し実施します。 ・障害福祉サービス事業所等で喀痰吸引等業務を行う介護職員等の計画的な養成を図ります。 ・重症心身障がいや医療的ケアの必要な在宅の障がいのある人の受入れを行う地域の医療機関や障害福祉サービス事業所等を把握するほか、地域において関連分野の支援の調整を行う医療的ケア児等コーディネーター(用語解説50番)が医療的ケア児等の所在する市町村に配置できるよう人材の育成を行い、障がいのある人本人及びその家族が円滑に必要な支援を受けられる環境を整備します。  また、その人材育成に当たっては、コーディネーターに求められる役割等に沿って研修することとします。 ・重症心身障がいや医療的ケアの必要な在宅の障がいのある人の家庭等を訪問し、必要な支援を行うほか、市町村において実施が困難な専門的支援なども含め、重層的な支援体制の整備を図ります。 ● 自立支援医療等の提供 ・障がいのある人が、その心身の障がいの状態の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療である自立支援医療を適切に受けられるよう、道、市町村及び医療機関が連携し、制度の周知や利用者の支援に努めます。 ・重度心身障がいのある人の健康保持と福祉の増進を図るため、市町村が実施する医療給付事業に対し、北海道医療給付事業(用語解説51番)による支援を行います。 (3) 難病等である人への支援 【推進の視点】 ・障害者総合支援法の対象とされた、難病等である人に対する地域の支援体制づくりが必要です。 ・令和元年(2019年)7月から、対象となる疾病が361疾病に拡大されたため、これらの疾病をもった方々が円滑に制度を利用できるよう周知に努める必要があります。 【推進施策】 ・身体状況等に応じた適切な福祉サービスが提供できるよう、相談体制や地域生活支援事業の充実を図ります。 ・障害者就業・生活支援センターを中心とした関係機関等との連携による就業及び生活支援を推進します。 ・北海道難病センター、市町村及び関係団体と連携して、新たに障害者総合的支援法の対象とされた疾病をもった方を含め、難病等である人への制度の普及や必要な情報の提供を図るとともに、ニーズに応じた障害福祉サービス等の活用を促します。  また、医療機関に対し、制度対象となることなどについて周知するとともに、障害福祉サービス事業所に対しては、疾病の特徴などの周知を図り、難病等である人を受入の対象とするよう求めるなど、難病等である人が円滑にサービス利用できるように努めます。 8 精神保健福祉・医療施策の充実 (1) 地域生活を支える体制の整備 【推進の視点】 ・精神障がいのある人を含め、「希望するすべての障がい者が安心して地域で暮らせる社会づくり」を進めるためには、相談支援を中心とする地域の実情に応じた地域生活支援体制の充実に加え自治体を中心とした地域の精神保健、医療、福祉の一体的な取組の推進が必要です。 ・入院中の精神障がいのある人の地域生活への移行を進めるためには、地域の理解と医療機関を含めた関係機関の連携による継続的な支援が必要です。 【推進施策】 ●生活全般を支える相談支援体制の構築 ・市町村を中心とするすべての障がいのある人を対象としたワンストップ(一か所ですべてに対応できる。)で、中立・公平な相談支援を行うため、地域づくりコーディネーターを活用し、総合的な相談業務等の拠点となる「基幹相談支援センター」の整備とともに、虐待に関する総合的窓口である「市町村障害者虐待防止センター」や市町村の協議会の機能強化を中心とした、地域における関係機関のネットワークの充実を図ります。 ・相談支援機能をはじめとする支援体制について、その目指す姿として「北海道障がい者条例」に基づき策定した「地域づくりガイドライン」をもとに、それぞれの地域を支援します。 ●「精神障がいにも対応した地域包括ケアシステム」の構築 ・精神障がいのある人が、地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、既に圏域ごとに設置している保健、医療、福祉関係者による協議の場を市町村ごとにも設置できるよう、広域での調整に努め、重層的な連携による支援体制を構築します。 ・精神障がいのある人に対する地域住民の理解促進及び適切な初期支援(用語解説52番)の実施に向けて、研修会を行うなど、地域における受入れのための普及啓発に努めます。 ・精神科病院において、退院後生活環境相談員(用語解説53番)を中心に地域の相談支援事業所やピアサポーター等との連携を図りながら、本人への退院に向けた意欲の喚起や本人の意向に沿った地域移行支援が促進されるよう支援に努めます。 ・入院中から住居の確保や新生活の準備等の支援を行う「地域移行支援」や、退院し地域生活を始めた人への相談支援を行う「地域定着支援」を推進します。 ・ピアサポーター等を配置した精神障がい者地域生活支援センターにおいて、精神科病院や相談支援事業所等との包括的な連携などにより、精神障がいのある人の地域移行を促進します。 ・退院後に安定した地域生活を送れるよう、精神科病院や相談支援事業所等の専門職スタッフによる訪問等支援を推進します。 ● 高次脳機能障がいに対する体制の整備 ・高次脳機能障がいへの理解を深めるため、各障がい保健福祉圏域において、講演会、研修会の開催などによる普及啓発を行うとともに、保健所における相談支援等を進めます。 ・支援拠点医療機関において、高次脳機能障がいの診断基準、リハビリプログラムの普及を図るとともに、地域の医療機関や相談支援機関等との連携や専門的な指導等を進めます。 ・高次脳機能障がいのある人に対するリハビリテーションの提供や地域生活を支援するため、就労、就学、在宅生活、障害福祉サービス事業所等の利用支援などの支援体制の充実を図ります。 ●ひきこもり者に対する相談体制の整備 ・「北海道ひきこもり成年相談センター」において、ひきこもり当事者や家族等からの相談などに対応するとともに関係機関とのネットワークの構築や、ひきこもりサポーターの養成を進めます。 ・ひきこもりの方に対して、早期に対応するため、市町村や自立相談支援機関等の相談機関との連携強化を推進します。 ●依存症対策の推進 ・依存症に関する知識を普及し、当事者・家族を地域で支援することができるよう、地域住民に対する啓発や依存症の自助グループや支援者が実施しているミーティングの手法を学ぶ機会の確保など、依存症支援体制の構築を促進します。 ・北海道アルコール健康障害対策推進計画」及び「北海道ギャンブル等依存症対策推進計画」に基づき、予防及び相談から治療回復支援に至る切れ目のない支援体制を整備します。 (2) 保健・医療の推進 【推進の視点】 ・ 障がいの原因となる疾病等の予防・治療の推進や適切な保健・医療の提供が必要です。 【推進施策】 ● 支援体制の強化 ・対面や電話による心の健康相談を実施するとともに、自殺対策や依存症等に関する研修や技術支援により市町村等身近な地域における相談体制の整備を図ります。 ・うつ病等に対する保健医療福祉サービスを強化するため、内科等かかりつけ医に対する資質の向上を図るとともに、医療・保健・福祉等の各分野との連携体制の整備を進めます。 ・日常生活における障がいを軽減し、自立を促進するため、市町村等が行う機能訓練への支援を進めるなど、地域におけるリハビリテーション支援体制の整備を推進します。 ・休日、夜間等における緊急な精神科医療へ対応するため、精神科救急医療体制を整備し、適切な医療及び保護の機会の確保を図ります。 ・病状に応じた適切な精神医療が受けられるよう自立支援医療等の利用支援・周知に努めます。 ● 関係機関の連携強化 ・「北海道自殺対策連絡会議」や、道立保健所に設置している「自殺対策地域連絡会議」を通じ、保健、医療、福祉をはじめ、教育、司法、商工・労働等の関係機関及び団体と連携し、「北海道自殺対策行動(こうどう)計画」に基づく施策を総合的に推進します。 ・救急医療施設の整備のほか、合併症の方や遠隔地の方へ対応するため、地域における医療機関の連携強化を推進します。 9 就労支援施策の充実・強化 (1) 道民、企業、行政等が一体となった応援体制づくり 【推進の視点】 ・障がいのある人がいきいきと働くことのできる地域社会の実現のためには、地域の方々、障害福祉サービス事業所、企業、行政等すべての道民が、「障がい」や「障がいのある人が働くこと」について理解を深め、地域社会全体で応援する体制づくりが必要です。 ・福祉的就労における工賃向上や障害福祉サービス事業の安定的な運営に向けて、民間ノウハウを積極的に活用し、就労支援のための総合的なサポート体制の充実が必要です。 【推進施策】 ● 働く障がい者に対する道民の応援 ・障がいのある人の就労に関する理解を促進するため、道民一人ひとりにホームページや広報誌等様々な広報媒体を活用し、雇用事例や障害福祉サービス事業等の情報提供を行うとともに市町村における広報などの取組を進めます。また、こうした取組により、道民による障害福祉サービス事業所(就労継続支援事業所や生産活動を行う地域活動支援センター等)や障がいのある人を雇用している企業等(以下「障害者就労施設等」という。)からの購買など応援の取組を促進します。 ● 働く障がい者に対する企業・行政の応援 ・北海道障がい者条例に基づく「障がい者就労支援企業認証制度(用語解説54番)」及び「障がい者就労支援の輪を広げる取組〜道民一人1アクション(用語解説55番)」により、企業等による障がいのある人の雇用や障害者就労施設等への優先発注など、企業と連携した就労支援の取組を推進するとともに、その内容を広く道民にPRします。 ・認証制度については、必要に応じて評価基準の見直しを行うとともに、認証の取得を促進するための優遇措置として導入した道の低利融資や入札等での配慮について、より効果的な制度となるよう検討を行いながら、制度の普及・拡大を図ります。 ・障害者就労施設等の製品の販路拡大を図るため、流通事業者等の民間企業と連携・協働した取組を推進します。 ・障がいのある人の就労支援に関する各種施策(福祉、雇用)や雇用に関する取組事例を企業や道民等に情報提供するとともに、市町村においても企業等に対する情報提供が行われるよう働きかけ、障がいのある人の雇用や就労についての理解を促進します。 ・経済団体等へ障がいのある人の雇用を一層推進するよう要請します。 ・道は、毎年、障がいのある人が就労する施設等からの物品等の優先的な調達を推進するための方針を策定し、特定随意契約制度(用語解説56番)の活用などにより、物品購入や役務の提供等について、障害者就労施設等に対する優先的な発注に努めるとともに障がいのある人を雇用する企業等への配慮措置について検討を行います。  また、市町村等に対して、障がいのある人が就労する施設等からの物品等の優先的な調達を推進するための方針の策定を促し、障害者就労施設等への発注促進について、働きかけを行います。 ● 北海道障がい者条例に基づく指定法人制度の推進 ・北海道障がい者条例に基づく指定法人を核とした一元的な就労支援推進体制により、関係機関と緊密に連携しながら、障害福祉サービス事業の経営改善や受注拡大等の工賃向上に向けた各種取組を集中的かつ効果的に推進します。 ・道の調達方針に基づき、指定法人は各部局等が物品の調達を検討する際の相談窓口となり、障害福祉サービス事業所が提供可能な物品等の情報の収集や提供、マッチング支援などの取組を行います。 (2) 一般就労の推進 【推進の視点】 ・障がいのある人の就労支援を推進するためには、福祉、労働、教育等の関係機関が連携し、様々な分野において一体的に支援を行うとともに、地域においては、就業面と生活面における一体的な支援を行う障害者就業・生活支援センターを中心とした就労支援ネットワークなどを活用し、関係機関や企業、市町村等との連携や協働を推進することが必要です。 ・障がい特性に応じた職場適応や職場定着のための支援を障がいのある人及び企業双方に行い、本人の能力・スキルの向上と環境整備が必要です。 ・一般就労及び職場定着の促進のために、就労系サービス事業所(就労移行支援事業所、就労継続支援事業所、就労定着支援事業所)におけるサービスの質の向上と、就労支援担当職員等のスキル向上が必要です。 【推進施策】 ● 関係機関のネットワークの充実 ・北海道障害者雇用支援合同会議を中心に公共職業安定所、高齢・障害・求職者雇用支援機構北海道支部、高等技術専門学院、障害者職業能力開発校などの労働関係機関と協力して、制度、施策の横断的な調整に基づく一貫した雇用体制を推進し、地域の福祉施設、企業との連携づくりを進めます。 ・障害者就業・生活支援センターを中心に構築した就労支援ネットワークなどを活用し、地域における市町村、就労系サービス事業所、公共職業安定所、障害者職業センター(用語解説57番)、特別支援学校等中等教育機関、大学等高等教育機関、企業など、福祉・労働・教育等の関係機関、団体のネットワークの充実を進めます。 ・市町村の協議会や21障がい保健福祉圏域に設置している障がい福祉計画等圏域連絡協議会を活用して就労施策を推進します。 ● 移行サポート体制の整備 ・障がいのある人に就業面と生活面における一体的な支援を行う障害者就業・生活支援センターを中心に、関係機関と職業準備訓練から職場定着までのプロセスごとに役割分担し、生活支援を含め、障がいの種別や本人の希望に応じた包括的な支援が行われる体制づくりを進めます。 ・特別支援学校等中等教育機関及び大学等高等教育機関からの卒業、医療機関からの退院に備え、障害福祉サービスの利用や就労適性等のアセスメントに取り組む市町村等を支援します。 ・職場での実習・体験を通じて働くことについての意欲を持ち、一般就労の可能性を引き出すことができるよう、道における実習の受入や臨時職員としての任用を推進し、市町村における受入等についても要請します。 ・障害者職業能力開発校などにおける職業訓練や民間訓練機関等への委託訓練による知識・技能の習得の支援、企業見学会の実施等により一般就労の促進を図ります。 ・就職等の困難性の高い精神障がい、発達障がい、難病などの障がいのある人に対し、関係機関と連携して専門的な支援を行います。 ・地域間の均衡に配慮しつつ、就労系サービス事業所の整備を促進します。 ● 企業に対する雇用や職場定着のための支援 ・障がいのある人が企業において職場環境に適応するための実地訓練を行う職場適応訓練の活用を促進します。 ・障がいのある人の雇用の経験がない企業に、障がいのある人の雇用を取り組むきっかけづくりを進める障害者トライアル雇用制度(用語解説58番)の活用を促進します。 ・障がいのある人の職場適応を容易にするために、企業へ派遣される職場適応援助者(ジョブコーチ)(用語解説59番)の活用を促進します。 ・公共職業安定所を中心とした就職の準備段階から職場定着までの一連の支援(チーム支援)の活用が進むよう関係機関へ働きかけます。 ・障がいのある人を雇用する企業に対する助成制度の活用を促進します。 ・障がいのある人の生活面の課題を把握するとともに、企業や関係機関、家族等との連絡調整やそれに伴う課題解決に向けて必要となる支援を実施する就労定着支援事業の活用を促進します。 ・精神障がいのある人の職場復帰や職場適応を円滑に進めるための職場復帰支援の活用を促進します。 ● 就労支援サービスの質の向上 ・雇用施策や就労支援等の関係制度の理解促進を図るため、各地でセミナーや研修会を開催し、就労系サービス事業所、特別支援学校、大学等高等教育機関等の就労支援担当職員等の資質向上を図ります。 ・就労系サービス事業所を対象とした自己評価制度の導入を促進するとともに、就労支援に関する研修を体系化し、サービスの質の向上を図ります。 ● 大学等在学中からの就労支援 ・ 特別支援学校等中等教育機関及び大学等高等教育機関に在学中の学生について、早期に専門的な就労支援を利用することが、その後の就職活動を円滑に進める上で効果的である場合もあることから、在学中の就労移行支援事業の利用について、必要に応じ適切に取り組むよう、関係機関等と連携し、周知を図ります。 (3) 多様な就労の機会の確保 【推進の視点】 ・一般就労の推進や福祉的就労の底上げを図るためには、地域における関係機関等の連携・協力の下、障がいのある人の特性等を踏まえ、地域の実情などを踏まえた新たな取組や事業展開を促進し、障害福祉サービス事業所等における就労の場を拡大することが必要です。 ・就労系サービス事業所において、事業所以外での活動(施設外就労、施設外支援)の取組が進められています。一般就労の拡大に向けては、こうした企業や地域との連携が必要です。 ・障がい特性や個々の障がいのある人を取り巻く環境から、通勤が困難な障がいのある人が、在宅においても就業できる仕組みの整備が求められています。 【推進施策】 ● 地域特性等を活かした就労機会の確保 ・地域の行政、企業、経済団体、福祉団体等の連携・協力体制の充実を図り、障害福祉サービス事業所に対して、農業、工業、観光業等の基幹産業の関係施策とタイアップした取組や、介護・福祉サービスなど新たな職域に進出している取組に関する情報提供を進め、地域特性、障害福祉サービス事業所の特徴を活かした事業展開を促進します。 ・障がいのある人を雇用している企業などに対して、障がいのある人の職場定着などを支援する面などから、ピアサポーター(用語解説60番)などの活用について働きかけ、就労につながるような取組を進めていきます。 ・地域において、長年、障がいのある人を積極的に雇用している小規模企業間の交流を促進し、蓄積されたノウハウを広く発信することにより、各地域における障がい特性等を踏まえた新たな職域の開拓を図ります。 ● 施設外就労、施設外支援等の就労形態の普及促進 ・企業から請け負う作業を当該企業内で行う施設外就労(企業内就労)や就労系サービス事業所以外で活動を行う施設外支援(職場実習、求職活動、在宅就労)を推進するため優良な取組を紹介します。 ● 農福連携(用語解説61番)等の促進 ・障がいのある方の就労を促進するため、農福連携・水福連携など福祉と地場産業との連携に関する理解を図るとともに、地場産業や企業、市町村など地域における新たな就労の場の創出と自立促進、各事業所等に対する支援に努めます。 ● 情報通信技術等を活かした在宅就業等の推進 ・道や市町村等の優先調達による在宅就業障がい者の受注機会の増加を図ります。 ・在宅就業障がい者に仕事を発注した企業に特例調整金等を支給する制度など各種支援策の周知を図り、活用を促進します。 ・創業を目指す障がいのある人を支援するため、取組事例や創業に必要なノウハウ習得のための研修などの情報提供に努めます。 ● 高齢障がい者に対する就労支援 ・高齢障がい者の社会参加や就労に関する多様なニーズに対応するため、就労継続支援B型事業等による適切な支援を実施する体制づくりを促進します。 (4) 福祉的就労の底上げ 【推進の視点】 ・一般就労が困難な障がいのある人が工賃(賃金)と障害基礎年金などの社会保障給付により、地域で経済的に自立した生活が可能となるよう福祉的就労における工賃等の向上を図るため、障害福祉サービス事業所に対する民間ノウハウを活用した総合的な支援が必要です。 【推進施策】 ● 障害福祉サービス事業所の収益力の向上 ・北海道障がい者条例に基づく指定法人により、障害福祉サービス事業所に対し工賃向上計画の作成・推進に関する研修等を行うとともに、経営コンサルタント等による経営・事業改善、営業・製造技術等に関するアドバイスや市場ニーズを踏まえた商品づくりをめざした商品改良や新商品開発に関する専門的なアドバイスを行います。 ・障害福祉サービス事業所同士による原材料の共同購入や作業工程の分担、営業協力など連携体制づくりを推進します。 ・収益性の高い優良な障害福祉サービス事業所の生産技術・経営手法の紹介などにより、生産性の向上や新たな職域への事業展開などを推進します。 ・障害福祉サービス事業所が市場ニーズに対応した魅力ある製品や質の良い役務の提供を安定的に行うことができるよう、マーケティング手法等も取り入れて、市場ニーズ調査や製品等の評価を行い、障害福祉サービス事業所における商品づくり等の取組を促進します。 ● 製品等の販路拡大 ・企業が発注する業務を複数の障害福祉サービス事業所へスムーズにつなぐ「共同受注システム」の充実を図るとともに、専門コーディネーター及び道内拠点地域に配置する「地域スタッフ」により、製品・役務に関する情報提供や企業ニーズの収集など活発な営業活動を行うマッチング事業を推進します。 ・企業と障害福祉サービス事業所による商談会の開催や経済団体等が主催する商談会への参加などによりマッチング機会を拡大します。 ・行政機関の庁舎等のロビーや売店等のスペースを活用した障害福祉サービス事業所の販売コーナー設置など、行政における販売支援の取組を促進します。 ・大型商業施設等での販売機会の拡大や実証販売などを通じた製品改善、多店舗展開企業等での商品採用による市場での流通拡大を図ります。 10 多様な人材の確保・養成及びサービスの質の向上 (1) 人材の養成・確保 【推進の視点】 ・障害福祉サービス等の提供にあたり基本となるのは人材であり、サービス利用の際の相談や計画策定を担う相談支援専門員やサービス提供に係る責任者等の養成のみならず、サービス提供に直接必要な担い手の確保を含め、求められる多様な人材を質・量ともに確保することが必要です。 【推進施策】 ・サービス等利用計画を作成する相談支援専門員、サービス提供の中核を担うサービス管理責任者や児童発達支援管理責任者、相談支援従事者の養成研修について、北海道自立支援協議会を活用し、研修内容の充実を図ります。 ・サービス管理責任者や相談支援従事者等の資質の向上を図るため、地域づくりコーディネーターを活用し、身近な地域でのフォローアップ研修を実施します。 ・強度行動障がいや高次脳機能障がいを有する障がいのある人に対して、障害福祉サービス等において適切な支援ができるよう、人材育成等を通じて支援体制の整備を図ります。 ・事業者がサービスを提供する際の利用者への意思決定支援の質の向上を図るため、サービス管理責任者や相談支援従事者等に対して、意思決定支援ガイドラインを活用するなど研修の充実を図ります。 ・利用者に適切なサービスが提供されるよう、障害支援区分認定調査員研修を実施します。 ・障害福祉サービス、障害児入所支援及び障害児通所支援等を提供する事業所の職員に対して、人権の擁護や虐待防止のため、研修の機会を通じて指導助言を行っていきます。 ・周囲とのコミュニケーションが困難な人の日常生活を支援するため、コミュニケーションの確保に必要な手話通訳者・要約筆記者等の研修を実施し養成に努めます。 ・社会福祉士や介護福祉士などの福祉関係専門職員の養成・確保を図るため、修学資金の貸付けや福祉人材センター及び福祉人材バンクを通じた人材の確保に努めます。 ・障がいのある人の健康な生活を支援するためには、医師や保健師、看護師などの保健医療関係専門職員が必要となることから、修学資金の貸付けや、潜在している人材の有効活用などに努めます。 ・福祉・介護職員の知識・技術の向上を図るため、職種や業務経験に応じた研修を行うとともに、職員のキャリア形成を支援する研修などを推進し、職場への定着支援に努めます。 ・障がい福祉の職場に対する理解の促進に努め、多様な人材の参入促進を図ります。 (2) サービスの質の向上 【推進の視点】 ・利用者に適切で良質なサービスが提供されるよう、障害福祉サービスの質の向上を図ることが必要です。 【推進施策】 ・利用者の地域での生活を推進する視点で、利用者のニーズに応じた障害福祉サービス等が提供できるよう障害福祉サービス事業者等の指定の際に厳正な審査をするとともに、指定後の指導に努めます。 ・利用者が適切にサービスを選択できるよう、障害福祉サービス事業者等の指定情報の公表を行います。 ・サービス利用に関する苦情解決の仕組みや福祉サービスの第三者評価制度の積極的な活用を推進し、利用者に対するサービスの質の向上に努めます。 ・障がいのある人の活動を推進し、利用者の立場に立ったサービスが提供されるよう、利用者によるサービス評価の仕組みなどについて検討します。 11 安全確保に備えた地域づくりの推進 (1) 安全確保に備えた地域づくりの推進 【推進の視点】 ・障がいのある人が地域で安心して暮らすためには、平常時から、災害や感染症発生時による生活環境の変化などに対応でき、必要なときにその障がいの特性に応じた適切な支援が受けられる地域の体制づくりを進めることが必要です。 【推進施策】 ●市町村における災害時等要配慮者支援策の充実 ・災害時における障がいのある人等の避難行動などの確保に向け、避難行動要支援者名簿が活用され、個別の避難計画の策定が進むよう、道が策定した「災害時における高齢者・障がい者等の支援対策の手引き」などにより、市町村等の関係機関や関係団体の取組を促進します。 ・市町村に対して、災害時における障がいのある人への情報伝達やコミュニケーション方法などを取りまとめた「災害時の障がい者支援対策等の事例集」や「障がいのある方への配慮と情報保障のための指針」の一層の周知を図り、災害や集団感染の発生時における障がいのある人への支援の充実に努めます。 ・災害時に障がいのある人等が安心して避難できる体制を整備できるよう、市町村における福祉避難所の確保を促進するとともに、その設置・運営に必要な資器材の確保や道による独自の支援制度である被災者相談や福祉的支援を行うことを目的とした「北海道災害派遣ケアチーム(DCAT)」等による人材の確保への支援を行います。 ・障がいのある人へ必要な情報の収集・提供を迅速かつ的確に行えるよう、日常生活用具等の有効活用を図るため、市町村に対する情報・意思疎通支援機器等の情報提供に努めます。 ● 共生による地域の体制づくりの推進 ・障がいのある人、高齢者、地域住民などが共に支え合いながら暮らすことができる共生型の地域づくりを支援するとともに、各種サービスを安心して利用できるよう安全の確保を図りながら、障がいのある人が必要な支援を受けられる地域の体制づくりを推進します。 ・被災した障がいのある人の中には、一時的に施設等への避難が必要な場合があることから、市町村と施設等の間における連携を図っていきます。 ・障がいのある人への日常的な提供や意思疎通支援などを充実させながら、災害や集団感染の発生時における支援体制づくりを進めます。  また、感染症に備えた取組については、「北海道新型インフルエンザ等対策行動計画」を踏まえ、支援体制づくりを進めます。 ・災害時に、障がいのある人等の災害時要配慮者ひとりひとりの福祉ニーズに的確に対応し、避難生活中における生活機能の低下等を防止するため、一般避難所で災害時要配慮者に対する福祉支援を行う「災害派遣福祉チーム(DWAT)」を組成するとともに、必要な支援体制を確保することを目的に、官民協働による「災害福祉支援ネットワーク」を構築します。 ● 施設利用者などに対する災害時等の支援策の推進 ・道が平成29年(2017年)8月に策定した「社会福祉施設等における非常災害対策計画の策定の手引き」を活用し、社会福祉施設等における非常災害対策計画の策定を進めます。 ・道と施設関係団体の間で締結した「災害時における社会福祉施設等の相互支援協定」に基づき、災害時における施設利用者の避難先の確保や、被災施設などへの人的・物的支援を行っていきます。  また、個々の施設に対しても、災害時において、直接避難できる同種・類似の施設を確保できるよう、施設間相互の協定の締結について働きかけます。 ・障害者支援施設等を利用する障がいのある人が安心して生活できるように、防犯に係る安全確保のための施設整備や防犯に係る職員の対応に関する点検等の取組を促進するとともに、関係機関や地域住民等と連携し安全確保体制の構築に努めます。 ・障害者支援施設等に対する集団指導において、非常災害対策の取組の強化について指導するとともに、実地指導の実施等により、消火設備その他の非常災害に際して必要な設備の設置状況や、非常災害対策計画の策定状況、避難訓練の実施状況等について確認し、適切な措置を講じていない施設等に対しては、改善が図られるよう指導します。 ・障害者支援施設等に対する集団指導において、国からの関係通知を周知し、感染予防とまん延防止の重要性を説明します。また、実地指導の実施等により、適切な措置を講じているか等を確認し、適切な措置を講じていない施設等に対しては、研修動画等を活用するなど、より実践的な方法で、実効性のある感染症対策となるよう指導します。 ・障害者支援施設等において、新型コロナウィルスの集団感染の発生など、早急に感染拡大防止策を講じる必要がある場合に、感染症管理看護師(ICN)等の感染症対策に係る専門家を派遣し、感染管理指導や助言等の技術的支援を行います。 ・障害者支援施設等で集団感染が疑われる事例が発生した場合、利用者の健康管理や支援を維持するため、速やかに現地対策本部を設置するなどし、感染者の入院調整や施設内感染拡大防止を行います。 ・障害者支援施設等の職員が新型コロナウィルス等の感染症に罹患し、生活支援員等が不足した場合に、生活支援員等を派遣する体制を整備し、障害福祉サービスが維持できるよう支援します。 ・近年の災害や新型コロナウイルス感染症の発生状況を踏まえ、障害者支援施設等に対し防災や感染症対策について周知を行います。  また、関係部局と連携して、障害者支援施設等における災害や感染症の発生時に必要な物資についての備蓄・調達・輸送体制をあらかじめ整備するとともに、道、市町村、関係団体が連携した災害・感染症発生時の支援・応援体制を構築します。