北の総合診療医 - その先の、地域医療へ(利尻国保5)

利尻島国保中央病院

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2021.03.26 記事

利尻島国保中央病院は1985年10月、離島の医療不安を解消しようと、利尻町と東利尻町(現・利尻富士町)の広域行政による北海道初の組合立病院として開院しました。病院を運営しているのは、両町で構成する利尻島国民健康保険病院組合という一部事務組合です。組合長である保野洋一利尻町長に、町や島の医療の現状と課題、病院への期待、行政の役割などをおうかがいしました。(インタビューは2020年12月、オンラインで行われました)

人口減少と少子高齢化が進む利尻島
島内で出産できない妊婦と家族を、町で支援

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利尻島は、人口減少に加えて、航空便就航で札幌での診療が容易になったことで、都市部の高度な医療を求める患者の流出が顕著になっています。利尻町も人口減少が進み、現在は2,000人弱。高齢化率は40%を超えています。介護保険の認定者数は要介護115人、要支援45人。一方、年間出生数は10数人で、年々減少傾向です。

島内には分娩が行える施設がなく、出産は市立稚内病院か、里帰り出産となります。島内での妊娠期間を安心・安全に過ごせるよう、町では妊娠中の支援を町の保健師が行い、支援内容は地元の助産師と共有します。稚内で出産する場合は妊娠37週から待機入院となり、家族と1か月以上離れてしまうことになりますので、家族支援も丁寧に行っています。

病院と連携して健診受診率を向上

利尻町の基幹産業は漁業です。町では、夏の限られた時期に町民に健康な体で働いてもらうため、その資本となる体がどのような状態にあるか、どうすることが必要かを自ら理解できるように働きかけを行っています。多くの人に健康診断を受けてもらえるよう、病院と連携してきました。2013年度に22.5%だった健診受診率は、40%を超えています。「町民の顔を知っている医師や看護師の後押しと、町の保健師、管理栄養士の支援が結びついた結果だと思います。今後も、町民の健康増進と医療費削減を目指していきます」と保野町長は話します。

医療・介護・保健・福祉が「顔の見える関係」構築

町内の高齢者の多くは、仕事や役割をもって生活しており、地域を支える中心になっています。しかし何らかの理由で生活を支える支援が必要になった際は、島にいない家族との連絡・調整等も必要です。介護サービスは、島内では民間の参入が得られないため、多くは行政がサービスを提供しています。地元薬局の薬剤師は、居宅療養管理指導で高齢者の適切な服薬を支援し、薬の相談も訪問で対応するなど、高齢者の生活を支える重要な担い手となっています。訪問時の状況は関係者間で共有し、小規模自治体であるからこそ、医療・介護・保健・福祉に携わるスタッフが顔の見える関係性を築いています。

病院は今後も無くてはならない存在
医療体制整備と医師確保に尽力

利尻島国保中央病院は島内唯一の病院として、急性期の患者に対応し、救急患者の受け入れも24時間体制で行っています。島内で新型コロナウイルス感染症の患者が発生した際も、早くからコロナ病床を運用して、看護師を配置し、すぐさま入院を受け入れました。保野町長は「島民の命を守り、島民が今後も安心して暮らしていく上で、無くてはならない存在です。医療従事者の確保や医療機器の更新など、より充実した医療体制の整備を今後も図らなければなりません」と強調しています。

病院は開設以来、35年が経過して建物が老朽化し、改築が急がれる状況です。「離島の医療環境を良くし、島民が安心して医療を受けられる施設の整備を、行政がともに行っていかなければなりません。現場の医師の意見も聞きながら、島内の医療提供体制の効率化や再構築も考え、利尻町と利尻富士町がさらに協力していくことが求められます」。

医師確保は、歴代首長にとって政策の大事な柱でした。病院は現在、淺井副院長と自治医科大学卒業の派遣医が支えていますが、過去には院長が短期間で次々交代する時期もありました。「地元の自治体としては、島で暮らすことの不自由さを少しでも解消できるよう、医師に過度の負担がかからない対応をしっかり行いながら、島で頑張ってくれる医師を求めてこれからも行動していきます」。

利尻島国保中央病院のほかの
医療スタッフのインタビューもご覧ください

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