保険金(損害賠償金)の請求
■保険金(損害賠償金)の請求 |
加害者請求 | 被害者請求 | 仮渡金の請求 | 時効 | 保険金請求に 必要な書類 |
任意保険の 一括払制度 |
損害賠償は、請求権者(被害者)と賠償義務者(加害者)との間で請求、支払されるのが基本的な形ですが、交通事故については、自賠責保険など自動車保険が関係しているので、ほとんどの場合は、保険会社に対する請求、支払を軸として進められています。
ここでは、自賠責保険に対する請求の手続と方法を説明します。
被保険者である加害者が、まず被害者に損害賠償金を支払ってから、その領収書、その他の書類を整えて、自分の契約保険会社に請求する方法で、原則的な手続です。
保険会社は、加害者が被害者に現実に損害賠償金を支払った限度で加害者に保険金の支払をします。
保険金の支払手続が加害者請求の方法しかなければ、加害者に損害賠償金を支払う資力がないような場合、また、加害者に誠意がなく積極的な対応がされないような場合には、被害者の救済が実現されないことになります。このため、被害者が加害者の加入している契約保険会社に直接請求する手続が認められています。これは自賠責保険の特色の一つで、被害者が自分で請求すれば直接被害者本人に賠償金が支払われるため、被害者の救済に有効な方法になっています。
事故のために死亡したり、けがをした場合に、早急にまとまったお金が必要になることがあります。こうした当座の必要に充てるため、被害者の請求によって、保険会社が損害賠償額の一部を仮渡金として一定額支払う手続です。
支払額は、被害者の損害の程度に応じて、それぞれ次の表のとおりとなっていますが、請求を受けた保険会社は、「遅滞なく」払わなければならないことになっています。ただし、加害者に任意保険が付保されており、後述するように一括払いの手続きが取られている場合は、医療費をはじめ当面必要なものは、逐次、支払いされることになっていますので、仮渡金請求の目的は、実質的に、これで満たされることになります。
■仮渡金額表 1 死亡した者 290万円 2 重傷で次に該当する者
- 脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの
- 上腕又は前腕骨折で合併症を有するもの
- 大腿又は下腿の骨折
- 内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの
- 14日以上病院に入院を要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
40万円 3 その他の傷害で次に該当する者
- 脊柱の骨折
- 上腕又は前腕の骨折
- 内臓の破裂
- 病院に入院を要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
- 14日以上病院に入院を要する傷害
20万円 4 軽傷(2又は3以外の傷害)で次に該当する者
- 11日以上医師の治療を要する傷害
5万円
保険に対する請求権にも時効があります。それぞれ、次のとおりとなっていますので注意が必要です。
※平成22年3月31日以前の事故の場合は、2年になります。
- 加害者の保険会社への請求権は、被害者に対する支払を行ったときから3年たつと時効になります。
- 被害者の請求権は、損害及び加害者を知ったときから3年たつと、時効になります。
- 時効が迫っている場合には、時効中断の手続をする必要があります。
加害者への直接請求の場合は、相手方から時効中断の承認を得るか、又は内容証明郵便で勧告をした後、6か月以内に訴訟提起など一定の法的手続きを取ることで時効は中断されます。
また、保険会社への請求の場合は、保険会社に時効中断申請書を提出して、その承認を受けることができます。
保険会社に保険金(損害賠償金)を請求する場合に必要な書類は、次の表のとおりです。
※注意 |
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必要な書類 書類を発行
するところ死亡 傷害 損害
賠償額仮渡金 損害
賠償額仮渡金 支払請求書 損害保険会社 ◎ ◎ ◎ ◎ 交通事故証明書 自動車安全運転
センター◎ ◎ ◎ ◎ 医師の診断書 取扱い医師 ◎ ◎ 死体検案書又は
死亡診断書◎ ◎ 戸籍謄本・除籍謄本 市町村役場 ◎ ◎ 印鑑証明 ◎ ◎ ◎ ◎ 委任状
(請求権・受領権を
委任する場合、委任者の印鑑証明を必ず添付すること)他の請求権者 ○ ○ ○ ○ 診療報酬明細書 病院等 ◎ ◎ 休業損害証明書 雇主等 ○ ○ 事故発生状況報告書 ◎ ◎ ◎ ◎ 通院交通費明細書 ◎ ◎
注1 交通事故証明書
必要書類のうち交通事故証明書は、事故の発生を証明する大変重要な資料です。保険会社では、原則として事故証明書のないものについては保険金の支払をしないことにしていますので、請求手続きの上で、事故証明書の有無をめぐってしばしば問題が起きています。
事故証明書は、警察が届出等により事故の発生を確認したものについて発行されますので、事故報告をしなかったり、著しく遅れたものについては、発行されない場合もあります。したがって、「交通事故にあったとき」の項にも説明したとおり、必ず直ちに届出をしなければなりません。もし、何か特別の事情があって、事故証明書が発行されないようなときは、事故の日時、場所、事故当事者の住所、氏名、職業、年齢及び車両のナンバーなど基本的事項ばかりでなく、事故の目撃者、担当警察官等の氏名及び事故発生後の関係者それぞれの措置、言動などを具体的に把握しておき、後日に証明できるようにしておく必要があります。
注2 交通事故証明書交付申請手続
証明書が必要な方は、自動車安全運転センターに行き、手数料540円を払い込めば交付してくれます。
また、遠方の方は最寄りの郵便局で手数料を郵便振替で送り、申し込めば郵送してくれます。
この交付申請書は、警察署、駐在所、交番、損害保険会社、農協などに備え付けてあります。
住所地以外の都道府県で起こした交通事故についても、地元のセンターに申し込むことができます。
任意保険には、自賠責保険と任意保険の対人賠償保険の保険金を一括してその保険会社が支払う一括払制度があります。自賠責保険と対人賠償保険が、別々の保険会社に契約されていても差し支えありません。
この制度は、請求者が双方の保険会社にそれぞれ各別に請求する手続を任意保険会社がまとめて行ってくれるという点で便利です。
しかし、何かの都合で請求者、特に被害者が各別に請求したいときは、必ずしも一括払による必要はありません。