損害賠償の解決
■損害賠償の解決 |
示談 | 調停 | 訴訟 |
損害賠償を解決するための方法として、示談、調停、訴訟の3つがあります。
示談とは、賠償問題を当事者間で話し合って解決する方法です。示談は、当事者の合意さえあれば成立するもので、交通事故の損害賠償のほとんどがこの示談で解決されています。しかし、当事者だけの話し合いであっても、一旦成立した示談は法的な効力を持つことになり、むやみに取り消したり、内容を変えることはできません。
したがって、慎重に示談を進める必要があり、特に次のような事項に注意することが大切です
示談の時期
損害の全容がはっきりするか、少なくとも十分な見通しがつくまでは、示談をするべきではありません。例えば、けがをした場合は、完全に治療(症状固定)した上で示談するのが原則です。
当座の費用に困るようなときは、自賠責保険の仮渡金や内払金を利用することもできます。
示談の相手を確定する
交通事故の場合は、賠償責任者も請求権者も複数になる場合が少なくありません。したがって、相手の身分や資格などをよく確かめて、間違いのないようにしなければなりません。請求側に立った場合は、加害者の使用者など、支払能力のある者を必ず含めておく配慮も必要です。
代理人の場合は、委任状などで代理権の有無をよく確かめましょう。
賠償額の算定
賠償額については、その算定の方法や立証資料などを双方で納得のゆくまで話し合い、公平で妥当な額を決めなければなりません。
交渉の態度
相手方の甘言、泣き落とし又はおどしに屈せぬよう、また、自らも感情的にならぬよう、冷静で慎重な態度が必要です。主張を押し通すばかりでなく、お互いに譲り合う気持ちを持つことも大切です。
加害者側に立った場合は、事故直後から被害者に対して相応の誠意を持って対応することが当然であり、示談を円滑に進める上でも必要です。
示談書の作成
示談が成立すると、後日のために、示談書を取り交わしておきます。様式などは特に決まっていませんが、一般に次のような様式で作成することになりますから、参考にしてください。
示談で取り決めた以外の債権、債務関係は一切ないことを確認するため、いわゆる権利放棄条項をつけておくことを忘れてはなりませんが、後日に予想もできなかった後遺症などが出ることも考えて、必要に応じて、適当な権利留保条項を入れておくことがよいでしょう。
履行の確保
示談をしても、そこで約束したことを守ってもらえなければ、何にもなりません。賠償金と引換えに示談書を渡せば問題はありませんが、分割払いや後払いにしたときは、確実に履行させるため次のような措置が有効です。
- 違約条項を入れる。
- 連帯保証人をつけさせる。
- 抵当権を設定する。
- 公証役場で公正証書にする。
- 簡易裁判所で即決和解調書にする。
調停は、当事者同士による示談交渉がうまく進まない場合、当事者が裁判所に申し立て、裁判官1名と調停委員2名で構成される調停委員会の斡旋の下で、紛争の解決を図ろうとするものです。
調停は手続が簡単で、裁判よりも解決に要する日数が比較的短く、費用も安く済みます。
また、当事者は非公開の場で、公正な第三者を交え十分に主張を述べることができます。
しかし、調停はあくまでも当事者間の合意を前提としており、調停委員会の見解にも強制力がないため、相手が出頭しなかったり、双方が主張を譲らないときは、調停は不成立になります。この場合は改めて訴訟を提起せざるを得ません。
申立ての方法、費用
調停の申立ては、簡易裁判所に調停申立書を提出して行います。
費用としては、申立て手数料と調停申立書の副本を送達するための郵便切手代などが必要です。
調停の効果
調停が成立すると調停調書が作成されますが、これは裁判上の確定判決と同じ効力を持つことになり、相手が履行しない場合は、直ちに強制執行ができます。
示談や調停で解決できないとき、最後の解決の方法が訴訟です。
訴訟は、本人でもできますが、実際には大変手続などが難しく、弁護士に依頼するのがよいでしょう。
訴訟は、一般に時間や費用がかかるため、敬遠されがちですが、最近は裁判の迅速化が図られており、費用の面でも法律扶助制度などが設けられ、利用しやすくなってきています。
手続
訴訟は、原則として裁判所に訴状を提出して行います。請求金額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に対して行います。
最近、請求金額が60万円以下の場合は、簡易裁判所において少額訴訟の制度ができました。弁護士を必要とせず、1日で結審となります。
費用
- 手数料
訴訟費用としては、訴状に貼付する印紙代(手数料)と裁判所が送達するための郵便代が必要です。
- 弁護士費用
訴訟を弁護士に依頼する場合、着手金・報酬金が必要です。
・着手金 事件の対象の経済的利益の価額に応じて算定されます。 ・報酬金 事件処理により確保した経済的利益の価額に応じて算定されます。
■民事調停申立て手数料及び民事訴訟申立て手数料
種 別
調 停 ・ 訴 訟 の 価 格
手数料
調 停
50万円
100万円
200万円
300万円
500万円
1,000万円
2,500円
5,000円
7,500円
10,000円
15,000円
25,000円
訴 訟 50万円
100万円
200万円
300万円
500万円
1,000万円
5,000円
10,000円
15,000円
25,000円
30,000円
50,000円
■民事事件の弁護士報酬基準
平成15年夏に弁護士法が改正され、平成16年4月1日から弁護士会が定めた弁護士報酬標準規定が廃止されました。そのため、各弁護士が報酬の基準を作成することになっています。
詳細については、弁護士会又は受任弁護士に相談してください。
- 法律扶助
法律扶助は、裁判で解決をしたいが費用が都合できない人のために、一時その費用を立て替えてくれる制度です。平成18年10月より、財団法人法律扶助協会から、日本司法支援センター(法テラス)に業務が引き継がれています。日本司法支援センターは、本部のほか各都道府県に地方事務所をおいており、道内には、札幌、函館、旭川、釧路に事務所があります。
- 手続
はじめに法テラスで法律相談を受け、その後審査により適格と認定されると、裁判費用等の立替が行われ、事件終了後、審査により弁護士等の報酬金が決定されます。受任予定弁護士等がいない場合は、弁護士等の紹介を受けることもできます。
立替費用は原則として毎月分割で返済することになりますので、適格かどうかの審査は、勝訴の見込みがあるか、本当に資力に乏しいか、そのケースが扶助の趣旨に適うかなどの点から行われます。
なお、詳しいことは、法テラスコールセンター(電話 0570-078374)にお問い合わせください。