「北のものづくりネットワーク」の取組について~地域のネットワークと業界のネットワーク

技術的課題を解決する地域ネットワーク

道内各地域の産業支援機関や大学などで構成する地域のネットワークでは、各機関が持つ資源を持ち寄ることで、地域内での課題解決を促進し、地域内で解決できない課題は、全道的中核機関が支援しています。

発泡パネル洗浄技術の研究開発((公財)函館地域産業振興財団)

きっかけ

(有)コムテック(電気機械器具製造業)では、食関連機械分野への参入を図るため、水圧・油圧・空気圧を利用した装置やロボットの研究開発実績を活かして、水耕栽培用発泡パネルの洗浄装置の開発に取り組んでいました。ベビーリーフ等の水耕栽培では、ひとつのファームで1万枚以上の発泡パネルを使用するケースがあります。作物の収穫後等では、栽培に使用した発泡パネルを100~200枚/回の割合で洗浄して再利用しています。従来の洗浄装置は、タワシや水流等を利用していますが、力が弱すぎると汚れを落としきれず、逆に強すぎるとパネルを傷めて長期間使用することができなくなり、数千枚の発泡パネル交換が必要となるなど、コスト増の原因となっていました。水耕栽培で主に葉物野菜を生産している(株)Jファームから相談を受けた同社では、短期間で安全に洗浄する能力を持った洗浄装置の開発に取り組むため、(公財)函館地域産業振興財団の協力を受けることとしました。(公財)函館地域産業振興財団では、洗浄方法の検討にあたり、北海道立総合研究機構工業試験場へ相談し、専門家の派遣を依頼することとしました。

取組内容

工業試験場の専門家による技術指導では、はじめに水耕栽培農場を訪問し、現状の洗浄方法と現場における洗浄前後の洗浄度の評価方法について調査を実施しました。次に短時間で高い洗浄能力を持った効果的な洗浄方法として、高圧洗浄技術、マイクロバブル技術等について検討を行った結果、水と空気の二流体洗浄技術が適当と判断し、この技術を用いた洗浄装置の試作を行いました。試作機による検証実験の結果、洗浄前後の洗浄度が向上し、基盤技術を構築することができました。今後は、製品化に向け、ノズルの配置や洗浄速度等について実験的検証を進めながら、装置化技術に取り組んでいくこととしています。

既存金型利用によるICタグ埋込技術の開発((公財)室蘭テクノセンター)

きっかけ

社員食堂などでは、ICタグを食器に貼り付けて、料金精算や賞味期限の把握等に利用しています。多くのICタグは、既存の食器に接着剤で貼り付けているため、食洗機で洗う際に、接着剤の劣化などで、ICタグの剥がれや脱落、衛生面で課題がありました。(株)三好製作所室蘭工場(プラスチック製品製造業)では、ICタグとメラミン食器を一体的に成型することで課題を解決できると考え、室蘭テクノセンターから技術支援を受け、開発に取り組むこととしました。

取組内容

当初は、PPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂製のICタグを使って食器と一体的に成型しましたが、3mm近い厚みがあるため、既存の金型では成型できず、新たに試験用の金型を製作しました。実際に成型を行い、ICタグの読み取りを確認したところ、数パーセントの読み取り不良が発生しました。そのため、PPS樹脂で封止されたICタグ内部の配線状況の確認方法について、北海道立総合研究機構工業試験場へ相談したところ、X線CT装置を用いた非破壊検査についての助言を受け、不良の観察を実施しました。また、費用面を考慮し既存の食器金型を利用するため、厚みの薄いICタグを調査しました。結果として外側のPPS等の樹脂部分のないICタグを使って成形しましたが、メラミン樹脂の流動により、一部にICタグコイルの破断等の不良が発生していました。そこでICタグをメラミンフォイルで保護した状態で加圧力・温度・時間を調整することで不良を低減でき、既存金型を利用してICタグ埋込成形を行えるようになりました。今後は、製品化に向け、試作品のテスト・改良に取り組み、2022年から販売を目指して、取り組んでいくこととしています。

自走式路面乾燥車(商品名「マグニス」の新規開発)((公財)道央産業振興財団)

きっかけ

重機及びアタッチメントの設計・製造・販売を行う(株)DieKraft(クラフト)では、凍結路面を熱風で解凍・乾燥させる「自走式路面乾燥車」の新規開発と共に外注部品の内製化及びコストダウンに取り組んでいました。開発にあたっては、技術的な課題があり、同社から相談を受けた金融機関(苫小牧信用金庫)が、『ものづくり企業活性化チーム学・官・金-道央圏』(道央産業振興財団、苫小牧高専、金融機関、苫小牧市の8機関で組織)へ協力を要請し、チームで連携して解決に当たることとしました。

取組内容

道央産業振興財団では、開発支援のため8回の専門家派遣補助事業を行い、上記の課題解決を支援するとともに、技術的バックボーンの確立に向けて、苫小牧市テクノセンター、苫小牧高専と協力し、「燃焼室の材料選択、昇温や路面温度の経時変化」等の技術解析支援を行いました。その結果、効率的な気流形状の形成や低コスト耐熱材料を選定した基本設計を策定するとともに装置に関係する特許も取得しました。また、経営的支援として、製品開発・製造に係る「ものづくり補助金」や、機械導入のための「先端設備導入計画」の申請を支援し、何れも採択されました。同社ではこの自走式路面乾燥車(商品名「マグニス」)を今期8台受注納品し、さらに商談が進行しています。小野寺社長は「近年顕在化してきた労働力不足に対応するための省力化機械の開発ニーズが益々高まってきています。今回、苫小牧高専や市テクノセンターと協力できたことで、専門技術をより習得・発揮する事が出来ました。その結果初期トラブルも同型機と比べて大幅に減少しリピートオーダーにつながっています。今後も現場ニーズに合った‘面白い’機械を開発して行きます」と力強く語ってくれました。

シソの葉粉砕分離機の開発((一財)旭川産業創造プラザ)

きっかけ

A社(食品加工業)では、生産性向上を図るため、現在、手作業で行っている調味料の原材料となるシソの葉を細かく刻む加工工程を機械化したいと考えていました。同社から相談を受けた(一財)旭川産業創造プラザのコーディネートで、旭川市工業技術センター及びB社(機械金属製造業)の連携による製品開発が始まりました。

取組内容

旭川市工業技術センターが3Dデータを用いて設計を行い、機械開発を担うB社が試作機を製作し、現場でのテストを数回実施して完成することができました。完成した機械は、現行の2倍程度の加工能力があり、約70%のコスト削減につながりました。A社では、今後も、生産性向上により従業員の負担軽減に取り組んでいくこととしています。

雪踏みローラーの開発(農業機械)((一社)北見工業技術センター運営協会)

きっかけ

(有)サンヨー工業(農業用機械製造業)では、野良イモ対策および土を凍らせて畑の生産力アップを実現するために、効果的かつ簡単に畑の雪を圧雪して土壌の凍結を促進することができる雪踏みローラーの開発に取り組みました。開発にあたり技術的課題が発生したため、北見工業技術センターへ製品設計開発に関わる技術支援を依頼し開発がスタートしました。

取組内容

開発する作業機は全幅約5mで作業を行いますが、トラクターに装着し道路を搬送するためには、全幅3m程度にしなければなりません。そのため、折り畳む機構が必要となり、北見工業技術センターが3次元CADを用いて折り畳み機構の開発支援を行いました。開発にあたり、強度解析に関わるシミュレーション解析については、解析方法など工業試験場からのアドバイスを得て行いました。3次元CAD設計を基に試作機の開発を行い、作業機および折り畳み機構の動作、強度確認を畑にて実証実験を行いました。いくつかの課題も確認できたので、その事項を改良し商品化に向けた開発を進めました。既に10件程度の問い合わせがあり、今年から販売する予定です。

とろろ昆布用プレス機の開発((公財)釧路根室圏産業技術振興センター)

きっかけ

(株)坂上造機(輸送用機械器具製造業)では、水産加工会社からの相談を受けて、食関連機械分野への参入を図るため、自社が持つ船舶の製作や配管施工の技術を活かして、とろろ昆布用プレス機の開発に取り組んでいました。とろろ昆布は、昆布を圧縮してブロック状にしたものを薄く削って生産していますが、切削時ブロックに割れが発生する場合があり、プレスの品質を安定させることが課題となっていました。同社では、生産性を向上し、最適なブロックをつくるため、(公財)釧路根室圏産業技術振興センターに支援を依頼。(公財)釧路根室圏産業技術振興センターでは、昆布の最適なプレス条件の検討にあたり、北海道立総合研究機構工業試験場へ相談し、専門家の派遣を依頼することとしました。

取組内容

工業試験場の専門家による技術指導では、パラメータ設計(どのような環境下でもばらつきが少なく、安定的に機能する条件を見つけ出す手法)による昆布加工機の効率化について指導を受け、簡易試作機を利用して、圧力や加圧時間など、最適なブロックを作る条件の検討を行いました。今後、実験により得たブロック成型の最適条件のデータをもとに、製品開発を進めることとしています。

インゲンマメゾウムシ寄生子実選別用光学選別装置の開発 ((公財)とかち財団)

きっかけ

(株)安西製作所北海道支店(選別機製造)では、自社の強みである選別技術を活かしてインゲンマメの寄生虫の有無を判定する装置の開発に取り組んでいました。成虫被害粒の検出は、すでに同社で要素技術を有していましたが、幼虫・蛹といった生育過程の検出確度には課題がありました。同社から相談を受けた(公財)とかち財団では、インゲンマメゾウムシの被害粒が各生育段階で示す食害部位の特徴を考察するため北海道立総合研究機構十勝農業試験場へ依頼し、人為的に寄生させたインゲンマメゾウムシ死虫のサンプルを提供していただける運びとなったため、高精度な光学選別装置の開発をスタートしました。

取組内容

同社ととかち財団は、(公財)日本豆類協会(平成28-30年度豆類振興事業)の助成の下、子実内部を透過可能な光源の開発や撮像冶具を製作し、多様な生育段階の食害部位を解析することが可能となりました。この結果、有意性のある特徴量を絞り込むことができ、適切な画像処理アルゴリズムを構築することが可能となりました。平成30年度は、高速に画像処理を行うためのハードウェアの改良や試作機の開発に取り組んでおり、製品化に向けた課題の洗い出しと対策を並行して実施する予定です。

付加価値の高い製品開発を促進する業界団体ネットワーク

ものづくりに関連する6団体のネットワークを構築し、業界団体の会員企業の相互交流により食品や機械、ITなど、産業間の連携を強化し、付加価値の高い製品開発を促進します。

取組内容業界団体等
・機械工業会とバイオ工業界の相互交流による会員間の交流促進
・機械工業会・バイオ工業会と道内大学(室工大、道科学大)による包括連携協定の締結
・各団体への相互加入(機械工業会、食品産業協議会、バイオ工業会)
(一社)北海道機械工業会、(一社)北海道バイオ工業会、(一社)北海道食品産業協議会
・他団体主催行事への後援やPRの協力各業界団体

農産未利用資源の乾燥粉末化による高度利用化

きっかけ

一社)北海道バイオ工業会会員の株式会社アミノアップ(食品製造)では、(一社)北海道機械工業会と(一社)北海道バイオ工業会の交流事業がきっかけで、(一社)北海道機械工業会会員のオーエスマシナリー株式会社(機械メーカー)の施設を見学しました。見学の際の意見交換がきっかけで、サプリメント原料である農産未利用資源(シソ葉、アスパラガス茎など)の乾燥粉末化の検討が始まりました。

取組内容

交流会をきっかけに、両社は相互に訪問し、意見交換を続けました。農産未利用資源については、一定程度の乾燥粉末化は可能となりましたが、原料としてのスペックに到達するためには、今後も継続して検討することが必要な状況です。株式会社アミノアップでは、この取組を道外の企業にも紹介したところ、野菜の乾燥粉末化について、設備導入に向けた検討が始まりました。(一社)北海道機械工業会、(一社)北海道バイオ工業会では、今後とも相互交流を継続することとしています。

カテゴリー

page top