道東(夏)

 

 

道東(夏)


 

 

自然を楽しむための注意事項   詳しくはこちらへ looktop.gif
<自然を楽しむために>
 動植物を採取してはいけない場所などがある
<危険な動物や刺激毒を持った植物などに気を付けよう>
 野外には危険がいっぱいあることを認識することが重要です
  ・ヒグマに注意
  ・スズメバチに注意
  ・マムシに注意
  ・有毒を持った植物に注意
<動物を観察するために>
  ・エサを与えないで
  ・幼い野生動物は保護しないで
  ・ゴミは捨てないで
  ・エキノコックスに注意
<植物を観察するために>
 植物を観察するためであっても必要以上の採取は慎みましょう
<車の運転をするにあたって>
  ・スピードの出し過ぎに注意
  ・動物との衝突事故に注意
  ・夜間も注意 
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76 阿寒湖・阿寒横断道路(国道241号)
 【針広混交林・森林の鳥・森林の動物・マリモ・エゾシカ・火山現象】
 所在地  阿寒町・足寄町(あしょろちょう)・弟子屈町(てしかがちょう)
 問合せ先 阿寒湖畔エコミュージアムセンター 0154-67-2785  

  阿寒湖畔にエコミュージアムセンターがありますので、阿寒湖畔の自然をより楽しむために自然情報を事前に入手することをおすすめします。湖畔にはエコミュージアムセンターから森林の中を抜けボッケを経由して周回する1周30分ほどの湖岸散策路(ボッケ歩道)が整備されています。エコミュージアムセンターの裏口が散策路の始まりですが、早朝など閉まっているときはエコミュージアムセンターの左側の太い散策路を進みます。エコミュージアムセンターの裏はミズバショウの群落がある湿地になっており、木道でこの湿地を抜け森に入ります。林内にはエゾリスがたくさん生息し、よくその姿を見かけます。また、朝夕の薄暗い時にキツネやエゾシカに出会うこともあります。鳥類はシジュウカラ類やキツツキ類、キビタキ、センダイムシクイ、アオジ、アカハラなど一般的に北海道の森で見られる鳥を見ることができます。また、クマゲラもときどき現れ、夕方にはヤマシギが林の上を飛び回り、湖水上をミサゴが飛んでいることもあります。
 湖畔に出る少し手前の森が開けた付近に至ると刺激臭が漂ってきます。これは火山活動の名残の泥火山からでる硫黄(いおう)の臭いで、アイヌ民族はこの泥火山を「ボッケ」(煮え立つ・所)と呼んでいました。大きなくぼ地の底からボコボコと音がしていますが、危険なため柵を設置しているので、柵の中に立ち入らないようにして下さい。湖岸に位置するものは比較的近くに見ることができます。冬に訪れると周辺の雪がとけており地熱の高いことが分かります。ここには本州に分布するツヅレサセコオロギやハラオカメコオロギが隔離分布しています。 
  
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双湖台からのペンケトウ(上の沼)
076.jpg  阿寒湖の周囲には、原生林の面影をとどめた森林がまだ残されています。トドマツやエゾマツの針葉樹が主体で、雌阿寒岳(めあかんだけ)の周辺ではアカエゾマツが多く見られます。阿寒湖畔から阿寒横断道路を弟子屈町方向に進むと、森林は針葉樹林から徐々にダケカンバ林へと移り、双岳台を過ぎた頃からまた針葉樹の森となります。雄阿寒岳や雌阿寒岳の登山路を少し歩くだけでも、山深い森の雰囲気は十分に味わえます。 
 阿寒湖周辺はエゾシカの生息密度が非常に高く、道路沿いで見られることもあります。特に春先には国道240号(まりも国道)沿いで、いくつもの群れを見ることができます。鹿の飛び出しによる衝突事故が多く発生し、また走行中の車がエゾシカを見つけ、間近に見ようと急停車することもありますので、追突事故にはくれぐれも注意が必要です。
  
 
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ボッケ(泥火山)

 
  
77 屈斜路湖畔
 【針広混交林・森林の鳥・森林の動物・火山現象】
 所在地  弟子屈町
 問合せ先 川湯エコミュージアムセンター 01548-3-4100
  
  屈斜路湖畔では、森林や動物、火山現象など様々な自然を楽しむことができ、代表的なところとして和琴半島、コタン~池ノ湯、砂場が一般的です。 川湯温泉には川湯エコミュージアムセンターがあり、ここで屈斜路湖周辺の全般的な知識を得ることができます。湖の南に位置する和琴半島にはエゾマツやトドマツ、アサダ、カツラ、ミズナラなどからなる森林が広がり、一周約2.5キロの歩道が整備されており、イイズナが出てくることもあります。半島内には地熱が高く雪が積もらないところが各所にあり、マダラスズ(コオロギ)が生息し、冬でも鳴き声をきくことができます。また、ここにはミンミンゼミが隔離分布しており、「和琴ミンミンゼミ発生地」として国の天然記念物に指定されています。先端部にはチャシコツ地獄と呼ばれている水蒸気が立ちのぼる熱湯の温泉地があります。サツテキナイから道道屈斜路摩周湖線を川湯温泉方向に入り、しばらく進んだところにコタンという集落があります。そこから湖畔沿いに露天風呂のある池ノ湯まで続くヤチダモなどの林に包まれた遊歩道があり、クマゲラやツミ、エゾライチョウなどの鳥が見られます。
077_078.jpg この他にエゾリス、キツネなどともよく出会います。遊歩道から湖畔に出られるポイントがところどころにあり、湖上にはカモ類が見られます。池ノ湯の湖岸には温泉が湧き出、冬期でも湖岸は凍らず、温泉に入るオオハクチョウが見られる場所として有名です。砂湯では湖岸の砂浜を少しほり下げるとお湯が湧き出てきます。ここにも湖岸沿いに温泉が湧き出ており、冬でも氷が張らず、オオハクチョウが越冬しています。冬期の屈斜路湖では、気温の変化により湖面の氷が収縮と膨張が繰り返された結果、氷が押し上げられる御神渡(おみわたり)現象が見られることもあります。
  川湯温泉から摩周湖に至る途中にあるアトサヌプリ(硫黄山)は今も火山活動をしており、噴気口近くまで行くことができますが、刺激臭が立ちこめ、足もとには熱湯が噴き出しており、やけどには十分な注意が必要です。この麓のツツジヶ原では初夏、イソツツジのお花畑が広がり、川湯エコミュージアムセンターからここを通りアトサヌプリまで抜ける歩道が整備されています。夏期にはこの歩道を使って早朝自然観察会がボランティアにより行われています。
  アトサヌプリの右側にある山(マクワンチサップ)に目を向けると植生が左右で異なることが分かります。これは、噴気の影響を受けている側と影響を受けていない側の違いです。
  ▲周辺地
  津別峠の展望台や美幌峠、小清水峠、小清水ハイランドからは、広大な屈斜路カルデラの様子を見ることができます。美幌峠はおおむねササ原ですが、稜線に多少の高山植物を見ることができます。また、反対側の摩周第3展望台からも、アトサヌプリや屈斜路湖カルデラの全景が見られます。9月から10月中頃までの早朝、屈斜路カルデラに雲海が発生します。これは放射冷却によるもので、各峠から見ることができます。
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和琴半島の温泉
 
 
 
78 藻琴山(もことやま)
 【針葉樹林・広葉樹林・森林の垂直分布 雲海】
 所在地  東藻琴村(ひがしもことむら)・小清水町(こしみずちょう)
 問合せ先 東藻琴村 0152-66-2131 小清水町 0152-62-2311
 地図は「77 屈斜路湖」と同様
 
 藻琴山は屈斜路湖の北に位置する標高1000mの屈斜路カルデラの外輪山で、なだらかにそびえる女性的な山です。登山ルートは2つあり、一つは東藻琴村側の7号目まで林道を利用し「銀嶺水」(湧水)の脇を通りダケカンバ、ナナカマドなどの樹林に包まれた山道を30分ほど歩きますと山頂に至ります。もうひとつは、小清水町側の小清水ハイランドからで、ハイマツの中を通って約1時間で山頂に至ります。小清水ハイランドには休憩所やトイレ、駐車場、展望地が整備されており、山頂から眺める屈斜路湖は大変すばらしく、雄阿寒岳や知床半島、オホーツク海、大雪山系なども眺望できます。また、ノゴマやルリビタキ、カヤクグリなどの鳥やわずかながら高山植物も見ることができます。
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藻琴山からみた夜明け前の屈斜路湖
 道道網走川湯線は藻琴山の中腹を通過する道路で、車窓からでも広葉樹林帯からダケカンバやエゾマツの針広混交林帯、ハイマツ帯へと森林の移行が手にとるようにわかります。また、中腹にあるキャンプ場周辺には見事なアカエゾマツの大木が見られます。小清水峠を少し下った付近では、ササ原の中に姿のよいダケカンバ樹林が見られます。9月ころには、屈斜路カルデラに発生した雲海がここの外輪壁からあふれ出し、朝の光を受け幻想的な色に染まることもあります。
  
 
79 養老牛温泉
 【針広混交林・森林の鳥・森林の動物】
 所在地  中標津町
 問合せ先 中標津町 01537-3-3111
  
  標津川の上流、標津岳の山裾にある温泉地で、周辺の平野部はほとんどが牧草地になっていますが、温泉から上は森林帯になっています。
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アオバト
 森林の鳥を見るには温泉の周囲だけでもいろいろな種類を見ることができます。標津川では、カワガラスやキセキレイ、イソシギなどのほか、運がよければヤマセミが小魚をねらっている姿を見ることができます。また、温泉地の中を流れる川の川原から温泉がしみ出していて、アオバトがそれを飲みに来ていることもあります。初夏には川の中にバイカモの花を見ることもできます。標津岳への登山道わきでは、5月~6月にオオタチツボスミレやエンレイソウ、フデリンドウ、コミヤマカタバミ、エゾノリュウキンカなどたくさんの花を見ることができます。
  ▲周辺地
  中標津周辺の耕地は防風林によって区切られており、みごとな田園風景を形成しています。防風林にはカシワの天然林を残しているところもあり、この地域の自然植生として貴重です。虹別にある水産ふ化場付近の川沿いの森も開拓以前の姿をしのばせています。中標津町の開陽台は根釧台地を一望でき、この地域の地形を見るのに最適なところです。
 
 
80 チミケップ湖
 【針広混交林・森林の鳥・クマゲラ】
 所在地  津別町
 問合せ先 津別町 01527-6-2151
 
 
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  チミケップ湖はトドマツやエゾマツ、ミズナラ、シナノキ、イタヤカエデなどの深い森林に囲まれた周囲7.4キロの堰き止め湖です。湖畔には探鳥路が整備されており、森の中には小さな沼や沢、湿原などが見られます。沢地では春先にはミズバショウやエゾノリュウキンカ、クリンソウ(サクラソウの仲間)が咲き、ヤチダモやハルニレの森の奥からアカショウビンの声を聞くこともあります。夏にアオサギが湖畔の岸辺で餌をとっているのをよく見ます。周辺地とともにこの地域はエゾシカの多いところでもあり、探鳥路で出会うこともあります。また、オオイチモンジ(蝶)やアカメイトトンボなど珍しい昆虫も生息しています。
  ▲周辺地
  津別町本岐はエゾシカの多いところで、畑のまわりにたくさんの案山子(かかし)や防鹿柵(ぼうかさく)が張り巡らされているのを見かけます。津別町のつべつ木材工芸館にはこの地域の木材の標本と、それらを使った木工品が販売されています。野外でみる生きた木とは別な角度から、利用されている木材の例をここで見ることができます。工芸館ではこの地方の蝶のコレクションも展示しています。
  
 
 
81 鹿の子沢(かのこざわ)
 【ウサギコウモリ・ナキウサギ・クマゲラ】
 所在地  置戸町
 問合せ先 置戸町 0157-52-3311
 
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  置戸町の西側は、大雪山系から連なる広大な針広混交林地帯となっており、シマフクロウをはじめとして多数の野生鳥獣が生息しています。しかし、森が深いことから、散策することはできませんが、その中にあって鹿の子温泉の近くにある鹿の子沢は比較的楽にその一端にふれることができます。こうもり岩では、ウサギコウモリを見ることができ、クマゲラの声も聞こえ、ヤマセミの姿も時折見られます。
  置戸の山はナキウサギがいることでも知られており、中山の麓の林道を少し歩くと、岩と岩の間からナキウサギの甲高い声が聞こえ、しばらく待っていると姿を見ることができます。なお、林道は、管理のためゲートを締めている場合もあります。
 ▲周辺地
  鹿の子ダムから足寄町芽登方面と上士幌町三股方面抜け出ることができ、山の中を走れば、北海道の深い森の雰囲気をを味わうことができます。三股方面へは道幅の狭い砂利道を通りますので、スピードには十分注意が必要です。時として道路にヒグマが出没することもあります。
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キツネ

 
 82 緑ケ丘森林公園~仁頃山(にころやま)
 【アオサギ・昆虫(蝶)】
 所在地  北見市
 問合せ先 北見市 0157-23-7111
  
  北見市郊外の森林公園で、手頃に森の散策を楽しめるところです。北海道の森林で見られるのシジュウカラやハシブトガラ、アカゲラなどを見ることができます。また、周辺の草地や藪でヒバリやエゾセンニュウ、ノビタキの声も聞かれます。北見地方は、よく昆虫が調べられており、5月上旬ころにはオクエゾサイシンを食草とするヒメギフチョウを、7月中旬ころにはヤマナラシを食草とするオオイチモンジ(蝶)を見ることができます。仁頃山に向かう途中にある富里ダムにはキャンプ場があり、冬はワカサギ釣りを楽しむことができます。仁頃山は、手軽なハイキングコースとして楽しめる場所で、山火事あとのダケカンバ林が山頂部に広がります。
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オオイチモンジ
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  ▲周辺地
  北見市若松にあるのアカエゾマツの植林地は、昭和初期に植えられた見事な人工林です。美園地区の無加川の岸辺にはアオサギのコロニーがあります。端野町にあるオホーツクの森(国有林)には、山火事跡に再生したシラカンバの林や古いトドマツの植林地などがあり、森の鳥も多く見られます。
 
 
 
83 サロマ湖周辺散策路
 【針広混交林・森林の鳥・森林の動物】
 所在地  佐呂間町・湧別町
 問合せ先 佐呂間町 01587-2-1211  湧別町 01586-5-2211
      北海道網走支庁 0152-44-7171(2981)
 
 
083_084.jpg  サロマ湖の南岸に面した幌岩山付近にはトドマツやカツラ、ミズナラ、シナノキなどの混じる針広混交林が残されており、大木も見られます。林内には歩道が設けられており、湖と森のおりなす風景を楽しむことができます。  幌岩山には麓の佐呂間町の宿泊施設から歩道が整備されており、富武士(とっぷし)と浪速(なにわ)からは林道を使って山頂に至ることができます。山頂近くには展望台があり、サロマ湖全体を見渡すことができる唯一のポイントです。カラ類をはじめ森林性の鳥類も多く、キツネやエゾリスなどの動物も多く見られます。浪速地区の湖岸にもカツラやヤチダモの大木の中を歩く平坦な遊歩道があり、オオルリなどの森の鳥を多く見かけます。
 ▲周辺地
  キムアネップ岬にはアツケシソウ(別名サンゴソウ)の大きな群落があり、秋になると紅葉のためあかく染まります。群落地は干潟でシギ類も多く見られます。キムアネップから浜佐呂間の湖岸沿いの道路は両側の木々が作り出す緑のトンネルとなっており、湿地にヤチダモ林も見られます。アッケシソウはサロマ湖に多く、湧別町計呂地(けろち)の円山やテイネイの鶴沼など各所の浅瀬で見られます。円山はミズナラの多い林で、西岸のテイネイにはハンノキやカシワの大木のある森もあります。登栄床(とえとこ)の三里浜にはキャンプ場があり、徒歩でサロマ湖の湖口まで行くことができ、ハマナスやハマヒルガオなどの植物が見られます。
83e.jpg幌岩山からの展望
 
 
84 サロマ湖ワッカ原生花園
 【砂丘の植物・草原の鳥・水辺の鳥】
 所在地  常呂町(ところちょう)
 問合せ先 ワッカネイチャーセンター(4月下旬~10月末)0152-54-3434 
       常呂町 0152-54-2111
 地図は「83 サロマ湖周辺散策路」と同様
  
  サロマ湖とオホーツク海を隔てる長さ約20キロの砂嘴(さし)を通称「竜宮(りゅうぐう)街道」と呼んでいます。ワッカ原生花園は、常呂町栄浦からワッカにかけての砂嘴上の海岸草原で海岸から砂丘上、湖側へといろいろな植物群落がみられます。ワッカ原生花園の入り口にワッカネイチャーセンターがあり、自然情報を入手できます。そこから奥は植生を守るため車の乗り入れが禁止されていますので、徒歩、貸自転車などを利用しての散策になります。ネイチャーセンターから第2湖口(ここう)を経由しワッカまでは片道4キロのほぼ舗装された道のりで、海岸の砂浜にはハマベンケイやハマヒルガオ、コウボウムギ、ハマボウフウ、ハマナスなどが生育し、砂丘の上から湖側にかけてはゼンテイカやハマナス、エゾスカシユリ、ムシャリンドウ、センダイハギ、クサフジ、スズラン、エゾフウロなどが咲き乱れます。海側の砂丘の斜面には、ハイネズという針葉樹が地面を這うように生育しています。ワッカは砂嘴の幅が約300mで、両側が海水域にもかかわらず、大きなカシワの林があり、真水をくみ出すことができるのがここの特徴で、カシワ林の下には、竪穴住居と見られる遺跡が多数みられ、オオバナノエンレイソウやマイヅルソウなど森林の植物もあります。
ハマボウフウ
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エゾスカシユリ
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  ワッカまではちょっと遠いという方や時間に余裕のない方は、途中のT字路(センターから約1キロ)付近まででも各種の花を十分に楽しむことができます。ネイチャーセンター裏の湖岸側にはアッケシソウを始め、ウミミドリ、シバナなどの塩湿地特有の植物が見られます。初夏の原生花園では草原の鳥の種類も数も多く、大きな羽音を立てて急降下を繰り返すオオジシギや喉もとがルビー色のノゴマ、美しいレモンイエローのシマアオジなどが見られます。ほかにもカッコウやベニマシコ、コヨシキリ、シマセンニュウと実に多くの野鳥を見ることができます。
  水鳥ではウミネコやオオセグロカモメなどのカモメ類は一年中見られ、春と秋には海岸や塩湿地にムナグロやメダイチドリ、ハマシギ、オオソリハシシギなどのシギ・チドリ類が渡ってきています。湖面にはキンクロハジロやホオジロガモ、ヒドリガモ、オナガガモなどのカモ類、そしてオオハクチョウも見られます。アオサギは湖岸のいたるところで見ることができます。
 
 
85 能取岬(のとろみさき)
 【草原の鳥・海鳥・オオワシ・オジロワシ・ゴマフアザラシ・流氷の音】
 所在地  網走市
 問合せ先 網走市 0152-44-6111   北海道網走支庁 0152-44-7171(2981)
  
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  能取岬は網走市街地の北西の能取半島の先端にある、断崖が続く岬で、白と黒の灯台がシンボルとなっています。岬の上面は平坦地で、牛馬の放牧が行われている牧歌的風景や知床連山、斜里岳の眺望を楽しむことができます。ここにはノビタキやノゴマ、オオジシギなどの夏鳥が多く、冬期には断崖の下の海にコオリガモやシノリガモなどの海ガモ類やオオワシ、オジロワシなどが見られ、ゴマフアザラシ、クラカケアザラシなどのアザラシ類を見ることもあります。アザラシ類は流氷が接岸するといなくなり、12月下旬ころと3月下旬ころから4月下旬ころまでが比較的見られます。4月上旬ころから断崖の縁にフクジュソウが咲き始め、残り流氷を背景に北国の春を感じることができ、初夏になるとゼンテイカが咲き乱れ、牧場には干し草のロールが点在し大いなる大地の風景を楽しむことができます。
  岬の1キロほど市街寄りに農耕地があり、その中間あたりの反対にゲートがかかった道 (美岬のキャンプ場入り口)があります。ゲートから300m程度進んだ周辺では、4月中旬ころから林の中にミズバショウが咲き始め、5月上旬ころからはヒメギフチョウも見られます。その道をさらに進むと、キャンプ場跡地に至り知床連山を一望できます。また、ここから海岸におりることができ、小川が約30mの滝となって直接オホーツク海に注いでいるのが見られます。春には、雪解け水が断崖の各所から流れ出しあちらこちらに滝が出現します。冬になると秋の長雨などでしみ出た水が凍り、氷のカーテンが各所に見られます。流氷の接岸の頃には潮溜まりにクリオネを見ることがあり、流氷の音を聞くこともできます。 能取岬とゼンテイカ
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海あけどきの朝
  能取半島にはトドマツがまとまった森があり、オホーツク沿岸の中では、貴重な森としてエゾシカの生息地ともなっています。二ツ岩の潮溜まりでも流氷の接岸の頃にクリオネを見ることがあり、二ツ岩の裏で流氷の音を聞くこともできます。
  ▲周辺地
  能取湖では水鳥が多く見られ、特に5月~6月は卯原内(うばらない)漁港周辺や能取工業団地周辺の干潟でシギ・チドリが多く見られます。植物ではアッケシソウの群落が有名で、卯原内漁港近くの生育地には駐車場や木道が整備されており、秋になると湖岸をあかく染めたアッケシソウの中にたたずむことができます。
 
 
86 網走湖とその周辺
 【広葉樹林・水辺の鳥・森林の鳥・アオサギの集団繁殖地】
 所在地  女満別町・網走市
 問合せ先 女満別町 01527-4-2111  網走市 0152-44-6111 
      北海道網走支庁 0152-44-7171(2981)
  
  網走湖周辺は、通常の観光では素通りされてしまいがちですが、豊かな自然が随所にありますので、ゆっくりと歩いてみることをおすすめします。呼人半島にはハンノキやヤチダモなどの大木があり、遊歩道が設けられているとても気持ちのよい森です。歩道の入り口は半島の呼人湾口と先端の2カ所ありますが、入った道を折り返すか、呼人湾口から入り先端から出て、農道を通って呼人湾口に戻ることになります。呼人湾口から入るとハンノキ・ヤチダモ林が広がりその下に4月上旬ころになるとミズバショウが一面に咲きます。歩道を奥に進むと、ところどころで森が開けて岸辺から湖を見渡すことができ、渡りの時期にマガモやキンクロハジロ、スズガモ、カワアイサなど多数の水鳥が見られます。夏にはヨシ原からはコヨシキリの声が聞こえ、森の中ではアオジやオオルリやアカハラ、クロツグミ、キビタキ、ニュウナイスズメの鳴き声やトビの営巣も見られます。また、我が国では道東・道北の一部でしか生息地が確認されていないアカメイトトンボ(目が赤いイトトンボ)がキタヨシの葉に止まっているのが見られます。 
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流氷原を走るノロッコ号
  動物では歩道にキツネの通ったことを示すフンが落ちていることもあります。半島の先端では湖畔から台地への道を上がった周辺で、エゾリスが食べたオニクルミの殻がよく落ちています。半島の西側にある呼人漁港からJR女満別駅裏に至る湖岸沿いの道路があり、車も少なくのんびり歩くことができます。中間地点から女満別寄りの湿原は「女満別湿性植物群落」として国の天然記念物に指定されており、ハンノキやヤチダモの大木が見られ、ミズバショウが一面に咲き、近くにはアオサギのコロニー(集団営巣地)があります。網走湖の西岸には嘉多山(かたやま)キャンプ場があり、水道と簡易トイレがあるのみで、自然の中での本来のキャンプを楽しめる場所です。
  網走湖の流出口(湖口)やその下流の網走川河畔林ではアオサギが休んだり、岸で採餌しているのも見かけます。冬季、湖は凍結するが湖口から下流には開水面があり、キンクロハジロの群や湖の氷の上でゴマフアザラシが希に見られます。早朝には河畔林に樹氷(樹霜(じゅそう))が咲きます。湖口は交通量の多い国道沿いにあり、駐車スペースもないので、観察の際は通行の支障にならないようにする必要があります。また、大曲にある漕艇倉庫裏の堤防からでも河畔林やヨシの樹霜が見られるほか、川面から水蒸気が昇っている中をキンクロハジロやホオジロガモなどのカモ類が泳いでいるのも見られ、訪れる人も少なくのんびりと楽しむことができます。大潮の頃の満潮時に流れ出た氷が、下流から上流におし戻される光景を湖口付近で見られます。これは、さかのぼる海水に乗ってきたもので、湖口では上がってきた氷が、結氷湖面の氷を砕いて奥に進むのが見られ、その音を聞くことができるほか、潮が流れ込んだ跡が水分を含んだ一筋の線として結氷湖面に出現します。このような現象は年中繰り返されているのですが、それを目で見ることが出来るのは冬期ならではのことです。
 網走湖は海岸から5キロ内陸にありながら汽水湖(きすいこ(海水と淡水が混じった湖))で、湖水は淡水に比べ重い海水が底の方に溜まりその上に淡水がある2層(海水と淡水が混ざりにくいため)となっています。これは、湖がすり鉢状の地形であることと、湖口が浅いところにあるためです。
 ▲周辺地
  女満別町朝日地区は、麦畑やジャガイモ畑が広がる高台にあり、展望台からは網走湖を眺望できます。この周辺は、故黒澤明監督の『夢』(オムニバス形式 第5話「鴉(からす)」)のロケ地です。網走湖の西岸を通る道道網走端野線沿いの二見ヶ岡から嘉多山周辺では、なだらかにうねる丘陵地に農村風景が広がります。
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大地に沈む夕日
 
 
  
87 小清水原生花園(こしみずげんせいかえん)
   ・涛沸湖(とうふつこ)
  【砂丘の植物・湿原の植物・草原の鳥・水辺の鳥・渡り鳥の中継地】
 所在地  小清水町 網走市
 問合せ先 小清水原生花園インフォメーションセンター(5月1日~10月31日)
      0152-63-4187  小清水町 0152-62-2311  網走市 0152-44-6111 
      北海道網走支庁 0152-43-7171(2981)
  
087.jpg  小清水原生花園は、涛沸湖(とうふつこ)とオホーツク海を隔てる砂丘の上にできた海岸植物と湿性植物の群落地からなっています。今ではあちこちで原生花園という名前をつけていますが、原生花園とはこの小清水原生花園に最初につけられた名前です。
 原生花園は、涛沸湖の湖口から浜小清水までの延長約7キロ、最大幅800mの区域で、およそ国道を境に砂丘草原と湿原草原とに分かれています。涛沸湖口側と浜小清水側の国道沿いに駐車帯があり、利用拠点の天覧ヶ丘には駐車場やインフォメーションセンター、歩道が整備されています。原生花園は字のごとく「原生」ではなく、昔、漁業船を陸あげする労働力として馬が放牧されていたり、蒸気機関車の火の粉で野火が発生したりしてできた半自然植生です。砂丘草原にはハマナスやエゾキスゲ、エゾスカシユリ、ハマエンドウなどの花々を、湿原草原にはヒオウギアヤメやセンダイハギなどの花々を見ることができます。花をじっくり見るところとしては天覧ヶ丘が最適で、そこ以外は国道から見ることになります。湖口側駐車帯付近はエゾキスゲの一大群落地となっており、北海道においてエゾキスゲが見られるところは少なく、群落地となればここしかありません。しかし、近年、花と一緒の写真を撮るためこの中に入り込みエゾキスゲを踏みつぶす光景が多くなり、道形ができ地面が固められ生育環境が悪化しました。そのため、ロープを張らざるを得なくなりましたが、それでも乗り越えて立ち入る人が多く見うけられますので、そのようなことは絶対行わないでください。また、植生回復のために5月連休明けに野焼きを行っています。
  花以外にも見るものは多く、ここで繁殖するシマアオジやノゴマ、オオジュリン、ノビタキ、カッコウなどの草原の鳥は5月中旬にはほとんどの種類が揃って、美しい姿とさえずりを披露してくれます。涛沸湖には、秋は9月から、春は氷の解ける4月はじめからオオハクチョウやヒシクイ、カモ類、ハマシギ、トウネン、キアシシギ、オグロシギ、オオソリハシシギなどのシギ・チドリ類が見られ、最盛時には数万羽にも達します。観察ポイントとしては網走市北浜の白鳥公園付近と湖口側駐車帯が上げられ、そこから湖側で見ることができます。浜小清水側駐車帯近くに草屋根の牧舎があり、屋根にはハマナスやエゾスカシユリなどが生えています。これらはそこに生育していたものや表土に混じっていたものなどが発育したものです。駐車帯から牧舎まで木道が整備されており、牧舎の裏側が展望台となっています。浜小清水から浦士別に至る道路沿に駐車場があり、その上の展望台から涛沸湖を見渡せ、夕方には湖が夕陽であかく染まります。また、平和橋の周辺は水鳥の観察にも適しています。湖岸にはハンノキ林があり、この地域の林の特徴ある姿が見られます。春にはこの下にミズバショウやエゾノリュウキンカの大群落となり見事です。北浜の白鳥公園横のヒオウギアヤメ群落は牧場の中にあり、斜里岳が正面に見えます。
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カラフトキリギリス
 丸万川の河口にはヒオウギアヤメやサワギキョウ、アッケシソウなどが見られ、その中に馬が放されており、北方的な風景が見られます。また、小清水原生花園には日本ではオホーツク海沿岸のみに生息するカラフトキリギリスが生息しており、湖口側駐車帯の国道をはさんだ向かいの斜面で、8月ころから10月中旬ころまで見られます。緑色や茶色をしていますので見つけにくいですが、金属音のようなジャッジャッジャッという特徴ある鳴き声をたよりにすると探すことができます。
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エゾキスゲ(黄)・
エゾスカシユリ(橙)
 ▲周辺地
  浜小清水から斜里までの海岸には砂丘の上にカシワの林が続いており、この地方の原植生が見られます。斜里町以久科(いくしな)の以久科原生花園にはエゾスカシユリの花が多く、その近くの砂丘にはトドマツが生育しており珍しいものです。斜里町立知床博物館の裏には歩道が設けられており砂丘林を歩くことができます。斜里町や小清水町、清里町などの畑作地帯にはカシワ林やヤチダモ林などの防風林が残されており、この地域の昔の姿をとどめています。小清水町浜小清水と止別の間にある止別川ではサケ・マスの遡上が9月ころから見られます。また、その周辺のヤチダモなどの人工林は、失われつつある環境を保全する運動を進めている(財)小清水自然と語る会が所有する「オホーツクの森」で、歩道などが整備されております。涛沸湖周辺の動物・植物を主体とした私設資料館が北浜郵便局横(涛沸資料館 要連絡:山田 0152-43-4711)に、農業・生活関係を主体とした私設資料館が浦士別の平和橋近く(浦士別資料館 要連絡:西谷 0152-46-3234)にあります。涛沸湖の周辺の網走市豊郷や中園、浦士別、北浜、音根内、小清水町浜小清水、倉栄、美和などは緩やかにうねる丘陵地が続く農耕地となっており、北海道ならではの広大な農村風景が見られます。


 
 
88 ウトロ海岸~知床岬沿岸
 【海辺の植物・海鳥・海獣・ヒグマ・エゾシカ】
 所在地  斜里町
 問合せ先 知床観光汽船 01522-4-2147  知床自然センター 01522-4-2114
                    
 知床の自然を楽しむには、陸からと海からの2通りの方法があり、じっくり花や野鳥を楽しむのなら陸から、雄大な知床連山や海岸の断崖、海獣類をというのであれば船に乗って海からということになります。陸からの場合の第一のポイントはウトロ港のすぐ横にあるオロンコ岩で、岩につけられた階段を登って行くとキリンソウやイワヨモギ、イワベンケイ、アサギリソウなど岩壁に特有の植物を見ることができます。頂上は平らでヒオウギアヤメやゼンテイカ、ハマナス、エゾスカシユリなどの花が見られ、オオセグロカモメやウミネコが風に乗ってすぐ近くを滑空し、足もとの崖で営巣するアマツバメは風を切る音を立てながら飛び交います。頂上からは、知床連山を一望でき、羅臼側から流れてくる雲が吹き上げられる様子や流氷の去った直後には沖の岩礁周辺で遊ぶゴマフアザラシが見られます。
088.jpg  もうひとつのポイントはフレペの滝(乙女の涙)で、幌別にある知床自然センター裏の遊歩道をたどり、ミズナラやケヤマハンノキ、オヒョウ、ホオノキなどの林を通り抜けて草原の中を前方の展望台へ至るコースです。ここを歩く前に自然センターで自然情報を得ると、より楽しく自然を満喫でき、このあたり一帯のヒグマ情報も得ることができます。また、ガイドブック(フレペの滝遊歩道)が発行されており、大変参考になります。この遊歩道はエゾシカの通り道にもなっており、足跡や小動物のフンを見たりします。フレぺの滝は通水性の低い溶岩層と通水性の高い土壌層の間を通ってきた地下水が崖の途中から流れ落ちる珍しい滝です。下の海面にはオオセグロカモメやウミウ、ヒメウ、シノリガモなどが見られ、オジロワシを見ることもあります。このあたり一帯にはヒグマが常時生息しており、ヒグマ出没のためにコースが閉鎖されることもありますので、案内板や自然センター職員の指示に絶対に従ってください。
  海からの観察はウトロ港からでる観光船を利用し、硫黄山沖で折り返すコースと知床岬まで行くコースがあり、野生動物を見るには岬コースをおすすめします。港を出た船は海岸沿いに走り、フレペの滝やカムイワッカの滝、カシュニの滝などたくさんの滝と100mもある断崖、知床連山を眺望できます。この航路では、春、海岸沿いで芽ぶき始めた植物や打ち上げられた海獣の死体を求めるヒグマが希に目撃されることもあります。エゾシカはよく見られ、断崖の上の草原や河口の草地にいるのが見られます。断崖にはオオセグロカモメとウミウのコロニーがあり、崖にあいた洞窟では驚くほどたくさんのアマツバメやイワツバメが繁殖しています。5月~6月には渡り途中のハシボソミズナギドリやアカエリヒレアシシギが海面を埋め尽くしていることもあります。オジロワシはこの周辺で繁殖しており一年中見られます。また、春にはアザラシを、夏にはイルカを見ることもあります。大型船の場合はあまり海岸に近づけないため、双眼鏡は必需品となります。
  なお、(財)日本自然保護協会から自然ガイドブック「知床の自然観察」が発行されているので、参考にすることをおすすめします。
▲周辺地
  ウトロ近くの幌別川や音遠別川(おんねべつがわ)では、秋にカラフトマスやサケの遡上が見られ、真鯉(まこい)地区のには道路を横断するエゾシカと車の衝突事故防止のために、道路の両側にフェンスを設けエゾシカを国道に架かる橋の下にエゾシカを誘導し、横断させるエコロードが整備されています。 
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フレペの滝
  
 
89 知床五湖
 【針広混交林・森林の鳥・ヒグマ・エゾシカ】
 所在地  斜里町
 問合せ先 知床自然センター01522-4-2114
  
  知床五湖周辺は開拓離農跡地で、たいていの観光客は時間がないため一湖だけ見て帰りますが、時間に余裕のある方には「知床五湖」ガイドマップを利用して五湖巡り、行程1時間半から2時間ほどのコースをおすすめします。この地域は羅臼岳の溶岩が堆積してできており湖水は溶岩層から湧きだしているもので、流れ込む川も出る川もありません。森に入ると溶岩の上に根を張ったトドマツが目につき、岩の上の薄い土に根を張っているため、風の影響で倒れる木も多くみられます。樹木ではトドマツやミズナラが多く、ほかにケヤマハンノキ、ダケカンバ、イタヤカエデ、オヒョウ、ハリギリ、ホオノキ、ヤチダモなどがあります。
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  野鳥ではキビタキやセンダイムシクイ、ウグイス、アオジ、シジュウカラなどの森林の鳥のほか、二湖と五湖ではマガモやカイツブリが繁殖しており、水面上にカイツブリの巣(浮き巣)も見ることができます。また、キンクロハジロやオシドリ、アオサギがいることもあります。森の中では哺乳類を見ることは少ないが、いろいろな痕跡が残されています。三湖ではトドマツにヒグマの爪痕が、五湖から出口の間ではエゾシカが木の樹皮を食べた痕が見られます。ミズバショウは全域で、ヒオウギアヤメやキショウブ、ネムロコウホネ、オヒルムシロ、ミツガシワは湖岸でみられます。このうちキショウブはこの地に入植した人が持ち込んだ帰化植物です。観光地とはいえここもヒグマの生息地のまっただ中で、ニアミスもしばしば起きていますので、レストハウスなどで出没状況の情報収集を十分に行うことが必要です。なお、ヒグマの出没で歩道が閉鎖される場合もあり、その時はレストハウス奥の高架式木道を使って一湖を見ることができます。
 ▲周辺地
  知床百平方メートル運動地はかつての開拓跡地の草原で、エゾシカが多く生息し、足跡などを見ることができます。ヒグマもいるので注意が必要です。夏期にはウトロから「夜の自然観察会」のバスツアー(有料)が出ていますので、新たな知床の魅力が発見できます。羅臼岳登山道の途中に(登山口から40分程度)オホーツク展望台があります。そこからは眼下に知床五湖や百平方メートル運動地などを眺望できます。
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第一湖と羅臼岳
 
 
  
90 羅臼岳
 【森林の垂直分布・高山植物・森林の鳥】
 所在地  羅臼町・斜里町
 問合せ先 羅臼ビジターセンター 01538-7-2828 知床自然センター 01522-4-2114
 
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   羅臼岳は、知床半島のほぼ中央に位置する知床連山の最高峰(1661m)で、羅臼温泉からと岩尾別温泉からの二つの登山道があります。登山道の始まりあたりではトドマツやミズナラ、イタヤカエデ、ハリギリなどの針広混交林で、アオジやセンダイムシクイ、ウグイス、コルリ、ハシブトガラ、ヒガラなどの野鳥が多く見られます。標高が増すにつれ次第に針葉樹が増えてきて、次にダケカンバの林、ミヤマハンノキの林へと移り替わります。このあたりになると、コマドリ、ミソサザイ、マヒワ、ウソ、ルリビタキなどの鳥が目立つようになります。標高700m付近になると高山帯に出現するハイマツが目立ち、鳥類もクロジやギンザンマシコ、ホシガラス、カヤクグリなどの高山性のものが見られます。
稜線付近には夏でも雪渓が残り、エゾツガザクラやアオノツガザクラ、チングルマ、エゾコザクラ、キバナシャクナゲなどの高山植物のお花畑が広がっています。知床の特産種であるシレトコスミレは硫黄山(いおうざん)まで行かなければ見ることはできません。稜線付近では7月中旬ころから国の天然記念物のカラフトルリシジミ(蝶)が見られます。哺乳類ではキツネが山麓から稜線上まで生息し、登山道ではエゾクロテンやオコジョと思われるフンを見ることもあります。ヒグマの数も多いので、登山やキャンプの際は充分な注意が必要です。 90e.jpg
羅臼岳から三ッ峰
 ▲周辺地
  知床峠から羅臼岳を眺めると溶岩の流れが舌状の形で固まった姿がよく見られます。冬季、羅臼町ではスケソウダラ漁が行われ、こぼれ落ちた魚をねらってオジロワシやオオワシが多数飛来します。海岸近の大木にこれらが止まっているのが見られ、たくさんのワシが止まる「ワシのなる木」と称される木もあります。このほかコオリガモやホオジロガモなどの海ガモ類も多く、ウミスズメ類も見られます。また、トドやアザラシもよく見られます。町の背後の斜面にはエゾシカも出没します。

 
91 標津(しべつ)湿原・ポー川
 【湿原の植物・草原の鳥】
 所在地  標津町(しべつちょう)
 問合せ先 歴史民族資料館 01538-2-3647
  
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 湿原ではツルコケモモやエゾゴゼンタチバナ、ナガボノシロワレモコウ、カキツバタ、ヒオウギアヤメ、ホザキシモツケ、チシマフウロ、ヤナギラン、ノリウツギなどの植物が、林ではエゾトリカブトやオニシモツケ、オオウバユリなどが見られます。
 ▲周辺地
  標津川に標津サーモンパークがあり、サケを科学的に楽しく学ぶことができます。羅臼町寄りの忠類川でもサケの遡上が見られます。
  標津湿原は、標津町の伊茶仁(いちゃに)地区にある伊茶仁川の支流ポー川流域に発達した高層湿原で、「ポー川自然史跡公園」として民俗資料館や湿原を巡る散策路などが整備されています。湿原の内陸側は低い丘陵でミズナラ主体の広葉樹林があり、川沿いはハンノキやヤチダモ林となっています。海岸部も含めると多様な環境の中、いろいろな動植物が見られます。野鳥で多いのはノビタキやベニマシコ、ノゴマ、マキノセンニュウなどです。丘陵上の林ではアカゲラやアカハラ、コサメビタキ、センダイムシクイ、ハシブトガラ、ヒガラ、カワラヒワなどがみられ、海岸が近いことからユリカモメやオオセグロカモメが現れることもあり、ポー川ではカワセミが生息します。湿原周辺にはシマリスが多く、エゾリスは丘陵上の林で見られ、朝夕には湿原にエゾシカが現れます。清流には魚も多くイトウも生息します。
91e.jpgヒメシャクナゲ
 
 
 
92 野付(のつけ)半島・尾岱沼(おだいとう)
 【湿原の植物・水辺の鳥・森林の鳥・タンチョウ・ワシ類】
 所在地  標津町・別海町(べっかいちょう)
 問合せ先 別海町 01537-5-2111 観光船運航会社 01538-6-2533
 
 
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   標津町から根室海峡へエビのしっぽのように突き出た砂嘴(さし)が野付半島で、それに囲まれた水域が野付湾です。半島へは標津町側から車で行くことも、別海町尾岱沼から観光船で野付湾を横断して行くこともできます。半島半ばのトドワラやナラワラは、トドマツやミズナラの林が海水の侵入で枯れたところで、特異な景観が見られ、トドワラは車道終点のレストハウスから歩道をたどって散策することができます。この付近は海岸草原や湿原になっており、クロユリやヒオウギアヤメ、ハマナス、ゼンテイカ、ノハナショウブ、エゾフウロなどが見られます。草原の鳥では、シマアオジ、オオジュリン、ノゴマ、シマセンニュウなどが楽しめます。また、この周辺は日本では数少ないアカアシシギの繁殖地の一つで、5月から6月の繁殖時期には歩道から、派手なディスプレー(求愛行動)をしているものを見ることができます。半島の内湾側の湿地ではタンチョウが繁殖していることもあり、夏はたいていその姿に出会えます。尾岱沼には一年中ゴマフアザラシが生息し、満潮の時には海面で遊ぶ姿を、干潮の時には砂州に上がって休む姿を観光船から見ることができます。
  春・秋の渡りの時期には、数百羽のコクガンが湾内で羽を休めます。冬期、尾岱沼の白鳥台では、オオハクチョウの給餌が行われ、オナガガモなどのカモ類も多く、周囲の海岸や草原にユキホオジロが群れていることもあります。また、厳冬期の日の出時に蜃気楼現象で変形した四角い太陽やだるま太陽などを見ることもあります。 
▲周辺地
  冬期、道路沿いの立ち木や、電柱の上にオジロワシやオオワシを見ることがあります。また、海にはオオセグロカモメやシロカモメ、ホオジロガモ、ウミスズメ類も見られます。
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トドワラ
 
 
 
 
93 春国岱(しゅんくにたい)
 【砂丘上のアカエゾマツ林・森林の鳥・草原の鳥・水辺の鳥・オオハクチョウ・タンチョウ・ワシ類】
 所在地  根室市        
 問合せ先 春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンター 01532-5-3047
 
 
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  春国岱は風蓮湖とオホーツク海の間にある砂丘で、海岸草原、湿原、塩湿地、そして砂丘上に生育するアカエゾマツの純林、と変化のある環境がそろっています。国道44号沿いの高台にネイチャーセンターがあり、自然情報を事前に入手して、春国岱の自然を楽しむことをおすすめします。時間に余裕のない方は、センターの周囲に歩道が整備されていますので、それを歩くだけでも自然を堪能できます。春国岱へは漁業者など一部の方を除き車両の乗り入れが禁止されていますので、砂丘の付根から徒歩で行くことになります。海岸草原にはハマナスやエゾツルキンバイ、ハマハタザオ、センダイハギ、ヒオウギアヤメ、ナミキソウなどの花が、湖岸の塩湿地にはアッケシソウやウミミドリ、シバナが、アカエゾマツの砂丘林の林床(りんしょう)にはガンコウランやツルコケモモなどの高山植物が見られます。
砂丘上に生育するアカエゾマツの純林は大変珍しく、ここの他は国後島で見られるだけです。野鳥では草原にはシマアオジやノビタキ、オオジュリン、コヨシキリ、ヒバリ、ノゴマ、ハクセキレイなどが、アカエゾマツ林にはミソサザイやキクイタダキ、ルリビタキクマゲラなどが、湖面にはアオサギやカモ類、カモメ類が見られ、湖岸ではタンチョウが繁殖しています。また、ここはシギ・チドリも多く、8月には秋の渡りの時期が始まりハマシギ、ミユビシギ、ヒバリシギ、チュウシャクシギ、エリマキシギなどが見られます。シギ・チドリの渡来が終る頃、ヒシクイやオオハクチョウ、カモ類の飛来が始まり、その数は全体では数万羽に達し、これらの水鳥の観察には国道44号沿いの道の駅「スワン44」が便利です。冬期、オオワシやオジロワシが風蓮湖上に群れていたり、電柱にとまっているのが見られます。 93-1e.jpg
アカエゾマツ林
 ▲周辺地
  春国岱の根室側にある温根沼(おんねとう)周辺にはアカエゾマツが深い森をつくり、森林性の鳥も多く見られます。また、沼の干潟にはタンチョウが餌をとる姿を見ることもできます。冬期、ヨシ原や草原ではノスリやチュウヒ、コミミズクが飛翔しているのを見かけ、年によってはシロフクロウが飛来することもあります。根室半島では冬に北方系の水鳥が飛来することがあり、コケワタガモが見られたこもあるので、海岸や港は重要な観察ポイントとです。また、納沙布岬(のしゃっぷみさき)ではラッコを見ることもあります。
 
 
94 落石岬(おちいしみさき)
 【アカエゾマツ林・湿原の植物・草原の鳥・海鳥】
 所在地  根室市
 問合せ先 根室市 01532-3-6111
  
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  落石岬は根室半島の付根近くにあり、太平洋に突き出した台地状の岬です。海岸草原に囲まれ、その中央にアカエゾマツの針葉樹林に囲まれた高層湿原があります。この草原にはノゴマやシマセンニュウ、ノビタキなどの草原の鳥が多く、岬の灯台から断崖にウミウやオオセグロカモメのコロニー(集団営巣地)が見え、チシマウガラスが繁殖していたこともあります。この他にケイマフリやウトウ、冬にはシノリガモやコオリガモなどの海ガモ類、ウミスズメやウミバトなどのウミスズメ類も遠くに見えることがあります。また、冬には草原の上にシロハヤブサやケアシノスリなどの猛禽類が飛翔します。中央の湿原は植物を保護するため木道が整備され、6月中旬ころ咲くサカイツツジが見られるところとして有名で、ユキワリコザクラやミズバショウ、ツルコケモモ、エゾゴゼンタチバナ、タカネナナカマド、ホロムイツツジなどの植物も見られます。
 ▲周辺地
 落石岬周辺の海岸線にはアカエゾマツ林が続き、枝にはサルオガセ(地衣類)がびっしりついており、特異な風景となっています。
 
 
 
95 湯沸岬(とうふつみさき(霧多布岬))・アゼチ岬
 【海辺の植物・草原の鳥・海鳥・エトピリカ】
 所在地  浜中町
 問合せ先 霧多布湿原センター 0153-62-2779  霧多布湿原トラスト 0153-62-4600
  
   
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 湯沸岬(霧多布岬)は霧多布市街から東に長く延びた岬で、切り立った荒々しい海岸線と海鳥、様々な花がみられます。湯沸岬の上は草原となっており、ゼンテイカやトウゲブキ、ツリガネニンジン、エゾノシシウド、オオハナウドなどの花が目立ち、カワラヒワやシマアオジ、ノビタキ、ヒバリなど草原の鳥も多く見られます。また、ゼニガタアザラシや、ごく希にラッコが観察されたこともありますので、海面も注意深く見ることをおすすめします。冬季にはコミミズクやハギマシコ、ユキホオジロもいることもあります。
アゼチ岬は湯沸岬の南にある岬で、ここ魅力は北海道ではほとんど見られないエトピリカが繁殖していることです。エトピリカは岬の先にある小島で少数見られ、草地に穴を掘って営巣しています。繁殖期の6月~7月に運がよければ見ることができるかもしれませんが、数が非常に少なく巣へ出入りするのを待ちかまえるのがポイントです。このほかに湯沸岬やアゼチ岬ではオオセグロカモメやウミウ、ヒメウも繁殖しています。この地域は夏に海霧が発生し、そのため衣類が濡れて寒い思いをすることもありますので、長時間野外にいるときは防寒具の用意も必要になります。 95e.gif
エトピリカ
▲周辺地
  霧多布市街の付根近くに新川干潟があります。ここではときどきタンチョウが採餌しているのがみられるほか、カモメ類やカモ類が羽を休めていたり、シギ・チドリ類も渡って来ます。植物ではエゾツルキンバイやシバナ、ウミミドリなどの塩湿地植物がみられ、少しですがアッケシソウも生育しています。
       
 
96 霧多布湿原
 【湿原の植物・草原の鳥・タンチョウ】
 所在地  浜中町
 問合せ先 霧多布湿原センター 0153-62-2779 霧多布湿原トラスト 0153-62-4600 
  
096.jpg   霧多布湿原の自然を楽しむ前に、霧多布湿原センターで自然情報を入手することをおすすめします。センターでは各種自然情報を提供しているほか、観察会なども行っています。また、センター内の展望室から湿原を遠くまで眺めることができます。霧多布湿原は花の湿原と言われ、ゼンテイカやワタスゲが多く、6月中旬から7月中旬ころまで湿原全体が黄色や白に染まり、その様子は琵琶瀬展望台からも俯瞰できます。  湿原内を観察するには、NPO法人霧多布湿原トラストによって作られた木道を利用するのが便利です。6月ころから花が咲き始めセンダイハギ、クロユリ、ヒメイズイ、シコタンキンポウゲ、クシロハナシノブ、エゾフウロ、ヤナギトラノオ、ヒオウギアヤメ、ノハナショウブ、ツリガネニンジン、サワギキョウなど数々の花を秋まで楽しむことができます。
  野鳥ではタンチョウが繁殖し、琵琶瀬展望台から眼下の琵琶瀬川の干潟で見られるほか、湿原中央を横切るMGロード(Marsh Grass Road)からも親子づれを見ることがあります。草原の鳥ではノゴマやシマセンニュウ、オオジシギ、オオジュリン、コヨシキリ、ベニマシコなどを見ることもでき、MGロードに設けられた歩道からも観察できます。冬季にはオオハクチョウが越冬し、湿原の中の川で羽を休め、海でアマモやスガモを食べています。ウミアイサやスズガモなどの冬鳥も多く、湿原の上ではコミミズクが何羽も飛んで、ホバリングの後、ストンと草むらに降りる光景を見ることもあります。ノスリやその他のタカ類も湿原の上を飛翔し、道路沿いの草むらではハギマシコやユキホオジロもいることがあります。また、コクガンも少数見られます。
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タンチョウとオオハクチョウ
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霧多布湿原
 ▲周辺地
 厚岸町(あっけしちょう)寄りにある火散布沼(ひちりっぷぬま)ではタンチョウが見られ、越冬していることもあり、オオハクチョウとタンチョウの珍しい組み合わせを見ることができます。火散布沼(ひちりっぷぬま)の隣にある藻散布沼(もちりっぷぬま)でもタンチョウが越冬することもあります。根室寄りの幌戸沼(ぽろとぬま)でもタンチョウが見られ、渡り時期には多数のカモ類も見られます。このあたりにはエゾシカが多く、秋にはエゾシカが歩いた道を沼周辺のヨシ原にはっきりと見ることができます。恵茶人(えさしと)の沼にもタンチョウがおり、この付近は6月下旬ころからヒオウギアヤメが美しいところです。これらの場所は、訪れる人も少なく自然を満喫できます。
 
 
 97 厚岸(あっけし)海岸
 【湿原の植物・海辺の植物・タンチョウ・オオハクチョウ・エゾジカ】
 所在地  厚岸町(あっけしちょう)
 問合せ先 厚岸町 0153-52-3131 厚岸水鳥観察館 0153-52-5988
  
097.jpg   厚岸湖の周辺には湿原が広がり、湖岸には塩湿地植物のアッケシソウがわずかに生育しています。このアッケシソウは湖の中にある牡蠣島(かきじま)で最初に発見されたもので、アッケシソウの由来も町の名前から来ていますが、近年地震の影響で牡蠣島が沈下しその姿が見られなくなりました。また、厚岸湖に注ぐ別寒辺牛川(べつかんべんうしがわ)沿いの長い湿原地帯にはほぼ手つかずの湿原が広がり、タンチョウが生息し、北海道らしい風景が見られます。国道沿いには環境省の厚岸水鳥観察館が整備され各種の情報を入手できます。厚岸湖には渡りの時期にはたくさんのカモ類やオオハクチョウが飛来し、一部は越冬しています。特に厚岸湖と別寒辺牛川が交わるあたりでは3千羽を超すオオハクチョウが越冬し、JR根室本線(花咲線)から見ることができます。
  厚岸大橋を渡り、道道別海厚岸線(北太平洋シーサイドライン)を霧多布方向へ進むとトドマツの森やダケカンバの森に囲まれた道路が続き、森の切れたところからは太平洋を眺めることができます。途中にあるアヤメヶ原は馬の放牧を長く続けており、結果として馬が食べないヒオウギアヤメやセンダイハギ、ツリガネニンジンなどが残ってできたお花畑で、その中で馬がのんびりと草をはむ風景が見られます。海岸の草原ではシマセンニュウやマキノセンニュウ、ノゴマなどの草原の夏鳥、森の中ではカラ類など多数の鳥が生息します。この地域にはエゾシカも多く、冬季にはこの地域の道路を走るとシカの足跡を多数見ます。道路の斜面上で草を食べているシカを見ることもあります。シカの交通事故も多く、車の前をシカが突然横切ることもありますので、注意が必要です。
 注) 厚岸湖は太平洋と繋がっており、通常の湖と性質が違いますが、ここでは厚岸大橋から東側を厚岸湖として扱いました。
 
 
98 尻羽岬(しりっぱみさき)
 【ゼニガタアザラシ・海辺の植物】
 所在地  釧路町
 問合せ先 釧路町 0154-62-2111
 
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  厚岸湾の西にくさび形に突き出ているのが尻羽岬で、岬からは大黒島が遠くに望むことができます。幹線道から離れているため訪れる人は少なく、ゆっくりと大自然を楽しむことができます。岬の先端まで小道があり、断崖の上の海岸草原には5月下旬ころユキワリコザクラが咲き、続いてヒオウギアヤメやゼンテイカ、ツリガネニンジン、トウゲブキ、エゾノシシウド、秋にはコハマギクの花などが見られます。また、眼下の海にゼニガタアザラシがいることもあり、ゼニガタアザラシを見ることのできる数少ない観察ポイントです。夏、海霧におおわれ気温が上がらず冷涼な気候であるため、ダケカンバの林が海岸近くに見られ、枝からトロロコンブのようになって下がるサルオガセを見ることができます。これらの樹林の下に春オオバナノエンレイソウやエゾオオサクラソウなどが花を咲かせ、一大群落となっています。夏になると草原にシマセンニュウやエゾセンニュウなどが見られます。
  ▲周辺地
  釧路町別保から厚岸町尾幌の間の国道44号沿いや釧路市白樺台から厚岸町尾幌の間の道道根室浜中釧路線沿いでは5月ごろオオバナノエンレイソウの白い花が見られます。
 
 
99 釧路湿原
 【湿原の植物・草原の鳥・水辺の鳥・タンチョウ・エゾシカ】
 所在地   釧路市・鶴居村(つるいむら)・標茶町(しべちゃちょう)・釧路町
 問合せ先 釧路湿原自然保護官事務所                       0154-56-2345
        塘路(とうろ)湖エコミュージアムセンター                 01548-7-3003
        温根内(おんねない)ビジターセンター(エコミュージアムセンター) 0154-65-2323
        細岡ビジターズラウンジ                           0154-40-4455
  広大な釧路湿原は大部分が踏み込むことが不可能な低層湿原で、一面のヨシ原とハンノキ林が釧路湿原の一般的な姿です。観察できる場所はある程度限られています。利用拠点として、湿原の東側では釧路町細岡の細岡展望台、標茶町塘路、茅沼、コッタロが、湿原の西側では鶴居村温根内、北斗展望台、釧路市北斗の湿原展望台があります。細岡展望台からは湿原を蛇行する釧路川や、土砂の堆積した川沿いや乾燥化したところに発達したハンノキ林の広がりが見られます。早春には釧路川からあふれた水が湿原に入り込み、そこでハクチョウが泳ぐ姿を見ることもあります。また3月から4月にかけての夕日は見事です。九月の早朝には放射冷却で達古武沼(たっこぶぬま)から大量に発生する水蒸気が湿原内に流れ込み、それに朝日に照らされた自分の影が映り、その影に虹が架かる「ブロッケン現象」が見られます。近くの達古武沼にはキャンプ場や木道が整備されており、湿原を間近に観察することができます。達古武沼ではキンクロハジロやマガモ、ヨシガモ、カイツブリ、アカエリカイツブリ、バンなどが繁殖しています。
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  塘路湖畔には塘路湖エコミュージアムセンターが設けられており、事前に自然情報を入手することをおすすめします。塘路湖ではカヌー体験ができ、近くのサルボ展望台からは、眼下に塘路湖やエオルト沼を一望できます。塘路湖の西側は国道に接しヨシ原となっており、春にはタンチョウやハクチョウ、エゾシカなどを見ることができます。冬季、塘路湖では御神渡現象が見られることもあります。塘路湖畔には標茶町の郷土資料館があり、動物や植物、先住民族の文化を紹介した展示物も多く、小さいながらも見応えのある資料館です。標茶町茅沼の温泉宿泊施設から南へサイクリングロードがあり、シラルトロ沼を展望できる展望台に至ることができます。シラルトロ沼にはヒシクイ(ガンの仲間)が多数飛来します。また、水鳥の渡来時にはオジロワシやオオワシも姿を現し、一部のオジロワシは釧路湿原で繁殖しています。塘路湖やシラルトロ沼の周辺では、アカメイトトンボやイイジマルリボシヤンマ、エゾカオジロトンボという北方系の珍しいトンボが生息しています。また、シラルトロ沼、塘路湖、達古武沼ではタンチョウが繁殖しているほか、塘路湖からシラルトロ沼にかけては、エゾシカの生息密度が高く、冬から春にかけてはごく普通に姿を見ることができます。塘路から湿原を横断する道道クチョロ原野塘路線があり、道路沿いにはキタヨシが見渡す限り広がり、川に沿って堆積した土砂でできた自然堤防が見られ、ヤナギやハンノキが生息しています。湿原ではミズバショウやエゾオオヤマハコベ、タチギボウシ、アキカラマツ、ツリガネニンジンなどの花も見られます。
 また、オオジュリンやシマアオジ、シマセンニュウ、コヨシキリなどの草原の鳥のほか、釧路川沿いではヤマセミやカモ類がよく現れ、タンチョウを間近に見ることもあります。途中にコッタロ湿原展望台があります。この展望台からは、釧路湿原と違った趣の湿原を見ることができます。湿原の西側の鶴居村温根内には温根内ビジターセンターがあり、湿原の状態や湿原の植物を身近に見る場所としておすすめです。ここには高層湿原や中間湿原、低層湿原とタイプの異なる湿原を通る周回遊歩道が整備されており、センターで情報を入手してから歩道を歩くことをおすすめします。特にここでは高層湿原ならではの植物観察をおすすめします。
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細岡展望台からの夕日
 北斗展望台や釧路市湿原展望台からは湿原が少し離れており、湿原の遠景はサバンナのように見えます。湿原展望台には周回歩道が設けられて、約2.5キロを1時間程で回ることができ、湿原に向かって左側の歩道は約1キロ先のサテライト展望台まで車椅子でも行くことができます。さらに終点から温根内ビジターセンターと北斗遺跡へ至ることもできます。湿原特有の植物景観であるヤチボウズは、道道釧路鶴居弟子屈線沿いの釧路市北斗で見ることができますが、距離は多少あります。湿原を流れる川にはイトウのほかアメマスが生息し、国内では釧路湿原のみに生息するキタサンショウウオは湿原の南西部の音羽地区や温根内で見ることができますが、夜行性であるため姿を見るにはライトなどの装備が必要です。なお、(財)日本自然保護協会から自然観察ガイドブック「釧路湿原の観察」が発行されていますので利用する前に読んでおくと便利です。
  ▲周辺地
  釧路市内にある春採湖にはヒブナ(紅い色をしたフナ)が生息しており、ヒブナの生息地として国の天然記念物に指定されています。キンクロハジロやスズガモ、コガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモ、ミコアイサなどが渡来し、マガモとホシハジロが繁殖しており、春採湖は日本で唯一のホシハジロの繁殖地です。春採湖の高台には釧路市立博物館があり、展示内容は豊富です。タンチョウは冬になると阿寒町や鶴居村にある給餌場に大半が集まるので観察は容易ですが、夏は湿原の中で生活しているので見られません。どうしても見たいという方は釧路空港近くの丹頂鶴自然公園で見られます。阿寒川や庶路川、茶路川は産卵期にシシャモが遡上する川として有名です。
  
 
100 白糠町(しらぬかちょう)~本別町(ほんべつちょう)(国道392号)
 【針葉樹林   ・エゾシカ】
 所在地  白糠町・本別町
 問合せ先 白糠町 01547-2-2171
   
100.jpg  白糠市街から茶路川をさかのぼり本別方面に向かう国道392号は、茶路川沿いの牧場地帯を通り、その後、山地帯に入ります。川沿いの平地はほとんどが牧草地で、山の斜面はトドマツやカラマツの人工林になっています。このあたりから音別町にかけては道内でも随一のエゾシカ生息密度の高い地域となっています。
 この地域ではエゾシカは一年中見られますが、見やすいのはやはり秋から春にかけてで、特に餌の少なくなる春先には、雪解けの早い道路際の斜面や牧草地に日中でも出て来ますので至るところで見られ、山間部の牧草地にはたくさんのシカが集まり大きな群れとなることがあります。早春以外の季節には早朝や夕方の薄暗い時の方が適しています。
 白糠町左股から本別町栄穂にかけては針葉樹林が発達しており、これも見ものの一つです。
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エゾシカ
   

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