再評価調書(苫小牧東部地区第一工業用水道事業)

平成10年4月17日

1.対象施策の概要

 

(1)施策の目的・内容(背景・契機)

 苫小牧東部地域(以下「苫東地域」)における基盤整備事業の一環として実施するもので、苫東地域の多様な産業活動に伴う工業用水需要に対応するため、沙流川水系の多目的ダム(二風谷ダム、平取ダム)を水源として事業の推進を図ることとなった。   【給水区域~苫小牧市、早来町、厚真町、給水能力~25万立方メートル/日】

 その後、「苫小牧東部開発新計画」(以下「苫東新計画」)に基づく工業用水の需要想定が約14万立方メートル/日と見込まれ、水源の検討を行った結果、苫東地域における工業用水の需要に対しては、二風谷ダムからの給水を基本とするが、当面は既設の苫小牧地区工業用水道(以下「苫小牧工水」)の未契約水量の有効活用を図って対応することとしている。

  

(2)経過(事業実績)

 本事業は、昭和46年に策定された「苫小牧東部大規模工業基地開発基本計画」(以下「基本計画」)に基づき苫東地域における基盤整備事業の一環として、工業用水需要に対応するため、沙流川水系の多目的ダムを水源として計画、実施された。

 昭和57年度に国が着手した沙流川総合開発事業の中で、道は利水者として平成9年までに20,335百万円を共同事業費として負担している。また、専用施設として、平成6年度から取水塔、導水路トンネルの一部及び電気設備工事を施工している。

 現状では、苫東地域における工業用水需要に対しては、既存の苫小牧工水の未契約水量の有効活用を図っていくこととしており、現在の立地企業6社に対しては苫小牧地区第二工業用水道から暫定的に供給を行っている。

 また平成9年に、道は苫小牧西部地区(以下「現苫地区」)の契約の現状や企業立地動向等を総合的に判断し、平取ダムからの取水を見送り、二風谷ダムからの供給を基本に対応することとしている。

 

(3)停滞要因及び将来の見通し(問題点)

 苫東地域の開発は、基本計画策定後、二度にわたる石油危機と80年代後半以降の円高不況で、企業が生産拠点を海外展開するなどの社会経済情勢の大きな変化により、重厚長大型の企業の集積を目指した開発構想は当初想定どおりには進展せず、国において平成7年8月に「苫東新計画」を策定し、研究開発や都市機能を備えた複合開発を図ることとしたが、工業用地の分譲が進まないなど、今なお厳しい状況が続いている。

 また、国内産業は用水型産業から非用水型産業へと移行し、用水型産業にあっても企業が水のリサイクル化を図るなど使用水量は減少傾向にある。

 このため、これまでに「苫東新計画」に伴う工業用水需要の見直しを行ったところであるが、今なお苫小牧地域全体における企業立地が進まない状況にあることから、二風谷ダムを水源とする専用施設として、直ちに導水管、浄水場等の建設に着手することは過大投資となり工業用水経営に大きな影響を与えることが懸念されている。

 

2.検討の基本的視点

 苫東新計画に基づく工業用水需要量が約14万立方メートル/日と見込まれていることから、道は現苫地区における工業用水の契約の現状やこれまでの企業立地動向などを総合的に判断し、平取ダムからの取水を見送ったところであり、二風谷ダムを水源とする専用施設の着工時期等について検討を行った。

 

3.道としての対応方針

 先に提出された所管部局の検討結果を踏まえ、道としては次のような方針で対応することとする。

 

(1)事業の取扱い

 二風谷ダムを水源とする導水管、浄水場等の専用施設については、工業用水の確実な需要が見込まれるまでの間、着工しないこととする。

 苫東地域及び現苫地区における工業用水の需要想定や近年の企業の立地動向などを勘案し、苫東地域における工業用水の需要に対しては、当面、苫小牧工水の需要動向から見込まれる未契約水量の活用により対応することとする。

 

(2)今後の取組み

 苫東地域においては豊富・低廉な工業用水が確保されていることを内外に示し、理解を得ていくとともに、苫東地域の企業立地の促進に向けた、基盤整備等総合的な施策の展開を国に求めていく。

 また、工業用水道事業経営に支障が生ずることがないよう必要な支援について国に対し要請を行う。

 苫小牧地区第二工業用水道から暫定的に供給している苫東地域の工業用水の実態を踏まえ、この地域における工業用水の位置付けを明確にするよう取り組む。

 なお、現在、苫東開発の進め方について関係者の間で協議が進められていることから、今後その動向を注視する

カテゴリー

計画局計画推進課のカテゴリ

cc-by

page top