北の総合診療医 - その先の、地域医療へ(留萌2)

留萌市立病院

総合診療専攻医 富田 賢剛 医師

2022.06.07 記事

プロフィール
空知管内新十津川町出身。2018年に北海道大学医学部を卒業後、倶知安厚生病院で初期研修。2020年4月から専攻医として留萌市立病院へ赴任。
資格
認知症サポート医、がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
趣味
ゴルフ、ボウリング
座右の銘・モットー
郷に入りては郷に従え、柳の下の泥鰌

留萌市立病院は、新専門医制度のスタートに合わせて「るもい総合診療医養成プログラム」を設置しています。富田賢剛医師は北海道大学を卒業後、2018年度から俱知安厚生病院で2年間の初期研修を修了、2020年度から同プログラム第1号の専攻医として、内科の副医長を務めています。将来は地域全体を診る小さなまちの総合診療医として働くことが夢だと語る富田医師に、総合診療の魅力や日々の学びについてお聞きしました。

子どものころに見た「まちの総合診療医」にあこがれ

富田医師は空知管内新十津川町出身。医師になりたいと考えたとき、念頭にあったのは、地元の総合診療医の姿でした。その医師とは、昭和30年代から50年間、町立診療所の所長として地域医療に尽力した野田良医師でした。「子どものころに熱を出した際、町には小児科の専門医がいないので、親は近隣の砂川市や滝川市の大きな病院に連れて行こうとするのですが、わたしはその先生がいい、と言い張るぐらい、その先生が大好きでした」。富田医師が高校に入学した年に引退し、町を挙げての盛大な感謝式典が開かれたのを見て、「やりがいのある素晴らしい仕事」との思いを強くしたそうです。

  • 子どものころに見た「まちの総合診療医」にあこがれ

「総合診療医を目指して北海道大学医学部に進学しましたが、総合診療に接する機会は少なく、周囲の影響で、外科や循環器内科、救急科などに心が揺れた時期もあったといいます。しかし最終的には、自分が本当になりたいのは入学当初に思い描いていた「地域のお医者さん」だと確信し、総合診療科が充実した倶知安厚生病院で初期研修を受けました。2年間の研修後、「多くの若手医師は医局派遣で1年ごとに動くキャリアパスが多いのですが、自分は医局に属していません。同じ病院にいると、知識やスキルに偏りが生じるのではないかと不安もありました」と、専門研修先は違う病院を選びました。「留萌市立病院を選んだのは、総合診療科ではなく、内科、循環器内科、消化器内科などを中心に地域全体を診ており、こうした病院で実践されている総合診療を学びたかったからです」。

患者の背景に合わせたオーダーメイドが総合診療の魅力

富田医師は2年目の専攻医として、主に内科疾患の入院と外来を担当しています。日々の診療について、「お会いする患者さん一人一人にさまざまな価値観や人生史があり、医療にかかる状況も千差万別です。受診の契機になった症状や検診結果に対しても、受け取り方は多種多様です。その患者さんの中で健康問題がどのくらい重要視されているか、経済的バックグラウンドや保険の加入状況(無保険の方も多数診ています)も影響しているはずです。医師が取るべき対応は基本的には診療ガイドラインにある程度の回答例がありますが、紋切り型の対応は必ずしも最適解ではないと思います。患者さんそれぞれに合わせ、オーダーメード化して治療するのが、総合診療の楽しいところです」。

  • 患者の背景に合わせたオーダーメイドが総合診療の魅力

認知症で、家族の名前も忘れてしまっているような患者さんが自分の名前を覚えてくれて、意識状態が悪い中でも「富田先生」と声を掛けてくれたことがありました。その事実に、とてもやりがいを感じる一方で、反省もしたそうです。「自分が出しゃばりすぎてはいないか。患者さんの人生において、家族よりも上に、私の価値観を持ってきてしまってはいないか、不安に思うことがあります。この診療が100パーセント正しかったと思えることはありません」。

どんな地域でも、求められる役割に応えられる
柔軟性が総合診療の生命線

富田医師が目指す医師の姿は、とても明確です。「小さなまちで、できるだけ長く腰を据えて、患者や地域に求められる総合診療医になりたい。高度な急性期治療をやりたいとか、一刻を争うような救急診療がやりたいとか、そういう気持ちはありません。この地域ではこういう医者が求められている、こういう医療機関や予防医療が求められている、ということに寄り添う形で、地域全体を良くしていく仕事ができればと願っています」。

医師に求められる役割は地域によって異なります。どんな地域でも役割を果たせるようになるためには、医者としての「我」を出しすぎないのが大事だと富田医師は考えています。「いろいろな地域に柔軟に対応する能力は総合診療の生命線の一つです。そうした可塑性や柔軟性を養う上では、日々の診療の中で患者さんや他のスタッフに意見を求めながら診療していかなければなりません」。また、病院や診療所など、医療のセッティングが違う多様な医療機関で勉強するのもとても大事だといいます。留萌市立病院は200床以上の大規模病院である一方、門前診療所(東雲診療所)を持っており、学びには良い環境と実感しています。

  • どんな地域でも、求められる役割に応えられる 柔軟性が総合診療の生命線

メッセージ

新専門医制度の開始後、総合診療領域の専攻医数が伸び悩んでいるとよく聞きます。しかし専攻医数が増やすことが重要なのではありません。総合診療が19番目の基本領域であり、しっかりとした学問体系があることを知らない学生や医師が多いことは総合診療業界の課題だと思います。たとえどのような専門領域に進もうとも、プライマリケアや総合診療は医師の基礎となる能力のはずです。総合診療という領域があることを知っていてもらえば、将来どんな専門診療科に進もうと、地域医療が充実するのだと信じています。

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